コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2019年6月26日号より
好調に推移していたり、一定の水準を維持していたりする事業を止めるのは難しいものです。
データは、その判断基準やヒントを簡単には教えてくれません。データは何気ない顔で好調な事業の良い数字を報告し続けてきます。問いかけや仮説、希望や意思などと付き合わせるとデータは何かを示唆してくれますが、その示唆を評価し判断するのも人です。
先日このようなツイートを見かけました。中川政七商店の緒方様によるものです。
ブランドコントロールについて長期で考えた結果、昨年の8月に楽天市場店を閉じた。
EC全体の4割を担っていた楽天を閉じるのは肝が冷えた。
が、1年かからずに本店サイトで楽天分をカバーできるように成長させることができそう。
勝因はひとえにメンバーの成長。これに尽きる。感慨深い。— 緒方 恵 / 中川政七商店 取締役 (@nullsonparade) June 23, 2019
PL責任持ってる人間がBS見据えて決断しなきゃブランドはコントロールもグロースもできない。でも、PLを背負いながら足元の売上切るのは本当に覚悟がいる。
「怖い。でも、俺たちなら行けるはず!」と自分とメンバーを信じ切れるかどうか。— 緒方 恵 / 中川政七商店 取締役 (@nullsonparade) June 23, 2019
好調な事業のKPIだけを追っていると、まず「好調な事業を閉じる」という判断にはなりません。緒方様はこの後のツイートでも述べていますが、ブランドやミッションなどだけで判断したのではなく、自社サイトのKPIの推移、実店舗や他のチャネルのKPIといった複数の要素から判断されています。
それらの複数の数字が直接の答えを出したわけでもないはずです。好調な事業を含むこれまでの延長に予想された未来と、新しい可能性とを天秤にかけて、見通しが立ち始めた新しい可能性に賭けたのでしょう。もちろんそのときに、ブランドとして思い描く未来により近いのはどちらか、という後押しもあったのだと思います。
KPIは部門ごとに、また担当者ごとに異なります。その各担当者や各部門のKPIが好調に推移していたとしても、その上のリーダーは複合的な判断が求められます。そのリーダーのポジションが上になるほど、ブランドやミッションなどと照らし合わせた判断が必要です。
そのような例をいくつか見聞きしたこともありますが、外部から支援している立場としても判断は難しいです。環境要因を整理しいくつかの予測を立てつつ、想定リスクを並べて判断を委ねるという感じでしょうか。
データは、判断基準やヒントを簡単には教えてくれません。問いかけや仮説を立てることでデータから示唆を得られますが、それを評価し判断するのも人です。さらにそれを元に行動するのも人です。多くの分かれ道を経て、思い描く未来は作られていきます。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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