コラムバックナンバー

以前「設計に携わっていないケースのデータ分析」というコラムを寄稿しました。

データ分析のニーズが増える昨今、ビジネスの現場においては、目的整理やデータ収集を分析者自らが行えないケースもあり、先のコラムではその際に留意するべきポイントを挙げましたが、今回は「データ分析を外部組織に依頼する際に留意するべきこと(=分析プロジェクトの外注)」について述べてみたいと思います。

◆分析目的とプロジェクト背景の共有
分析目的をステークホルダー全員で共通認識として定めておくことは、どのような分析プロジェクトであっても不可欠です。これは外部に依頼するときに限った話ではありませんが、外部に依頼する場合においては、コミュニケーションはより慎重に行う必要があります。内部組織であれば共通認識となる事柄や言葉の定義、表現が異なってしまうことにより、ミスコミュニケーションが起こると想定されるためです。これを避けるためには、分析目的の共有だけでなく、プロジェクトの対象となる事業やサービス全体の背景、業界用語などについても共有を行うと効果的です。

◆データの取得方法・取得背景、リレーションの説明
データの取得方法、分析対象としたデータの選定理由、そしてデータの取得粒度をどのように決めたかについては、実際にデータを参照しながら確認の時間を設けられると良いでしょう。あるいはデータチェックや基本分析の結果を委託先に提出してもらい、それをレビューしながらという方法でも良いと思います。データのリレーションやカテゴリデータの構造など、前処理工程に大きく関わる部分について認識が異なると、すべてを初めからやり直すことになりかねません。依頼側はデータ構造とリレーションをしっかりと把握したうえで依頼することが望ましいです。

◆データの追加手配が必要な際のアクセス方法を明示しておく
分析を進めていくと、データの追加手配が必要になることがしばしば起こります。外部組織から迅速に要望を受け取り、手配のできる仕組みや分析環境を整えておくとプロジェクトを円滑に進行することができます。

◆タスクの進行に応じた分析プロセスの管理
分析プロジェクトの進行度合いに応じ、委託先から基本分析が終わったタイミング、モデリングや詳細分析のトライアルを行ったタイミングなど、タスクの進行に伴ったレビューのタイミングを決めておき、そのフォローを依頼側が先んじて行えると良いです。そうすることにより、分析プロジェクトの方向が大きく逸れてしまうことを防ぐことができます。この管理方法は内製する場合でもプロジェクト管理者が行うべきことではありますが、外部に委託すると、どうしても進捗が把握しづらくなってしまいますので特に注意したいポイントです。

◆分析手法の概要と評価方法を把握する
分析手法を指定して外部に依頼することもあるかと思いますが、そうでないケースも多くあると思います。依頼側が把握していない/知見のない分析手法が用いられた場合、その手法はどのような目的の場合に用いられる手法なのか、適切な評価方法はどのようなものかを依頼側がすぐに把握することが肝心です。外注先に対し特に専門性の高い領域や手法などを期待して依頼する場合は評価方法については非常にセンシティブであって良いと私は思います。そうれなければ、専門用語を並べ立てられて最悪の場合は煙に巻かれてしまいかねません。

このように挙げてみると、外部組織に委託する際の留意点は、そのまま内部組織で臨む分析プロジェクトと何ら変わりがありません。ただ、外部組織であるがゆえに「より慎重に」意識する必要はあります。外部に委託することにより、スピードと専門性を得つつ、工程管理や分析ノウハウの蓄積も得ることができれば素晴らしいですし、私自身、今回整理してみて委託を受ける側としても意識していきたいことであると再認識いたしました。

コラム担当スタッフ

菅 由紀子

株式会社Rejoui
代表取締役

株式会社サイバーエージェント、株式会社ALBERTを経て、2016年に株式会社Rejouiを設立。DX推進支援、データ分析・利活用コンサルティング、データサイエンス教育事業などを展開。
統計ソフトRやPythonを活用した分析入門講座をはじめ、学生、企業、官公庁へ向けた統計・データサイエンス学習講座を提供。日本行動計量学会、WiDS TOKYO @ YCU、日本RNAi研究会等、数々の学会およびシンポジウムに登壇。自身がアンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価を受け、2021年度日本統計学会統計教育賞受賞。

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