コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2018年12月5日号より
「A/Bテストを重ねていけば、結果として数字はずっと良くなっていることになる」という謎理論は誰が言い始めたのでしょう。
Webサイトやアプリで行われるA/Bテストの多くは、刹那的なものです。
—
せつな‐てき【刹那的】
1 時間が極めて短いさま。
2 あと先を考えず、今この瞬間だけを充実させて生きようとするさま。特に、一時的な享楽にふけるさま。「刹那的な生き方」
デジタル大辞泉(小学館)
—
A/Bテストは、アクションやセッションといった短い時間単位のユーザー行動をもとに、その場での善しあしが判断されるものが中心です。ときにとても刹那的だなと感じます。
LTVや関係性構築といった長期的視点での状況や指標がポジティブかどうかを知るには、A/Bテストは得意ではないはずです(それを知る方法は例えばコーホート分析などになるのでしょう)。アクション単位やセッション単位でポジティブとされたA/Bテストの結果が、長期的にはネガティブな結果につながることも十分起こりえます。
A/Bテストを否定するわけではありません。A/Bテストの結果は重要です。しかし、データは全能の神ではありませんし、データこそが真実でもありません。物事の一側面を主観的に表しているに過ぎず、あくまで意志決定要素の一つです。
先日、データに対する盲目的な信仰に対する危惧について書かれた記事を読みました。
なぜデータドリブンではなくて、データインフォームドであるべきか – Kan Nishida
言葉のあやかも知れませんが、私もデータドリブンという表現に時折モヤモヤすることがあります。文脈のニュアンスによってそう感じるときがあるからだと思いますが、この記事で書かれている「盲目的信仰のようなもの」に対してです。「いま手元にあるデータは確かにこうだけれど、これだけで判断していいの? もっと理解しなくていいの? 自分たちのビジョンや意向はどうなの?」と、結果が出ても問いかけは止めるべきではありません。
直近で得られたデータはそうかも知れない。でも、何か懸念点があったり違和感を抱いたりしているのであれば、それを積極的に拾いたいし、意向やビジョンやミッション、ブランドも尊重したい。
昨年にも似たテーマでコラムを書いているのですが、その文末で書いた「ツールは結果を出しますが、それを咀嚼するのはヒトでありたい」というのは、ずっと意識していたいところです。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
2025/09/10(水)
オンラインセミナー「手間ゼロの広告レポーティングを「Looker Studio」×「Databeat」で実現する方法」|2025/9/10(水)
ツール研究会の2回目は、Databeatがテーマです。 広告データの収集から蓄積・レポート作成までを自動化できる「Databeat」の活用方 …
2025/08/27(水)
オンラインセミナー「GA4のセグメントで分析が変わる!探索レポート活用術」|2025/8/27(水)
このセミナーでは、Google アナリティクス 4(GA4)をより実践的に使いこなすために探索レポートのセグメント機能を基礎から活用術まで学 …
2025/07/16(水)
オンラインセミナー「【Canva入門 for マーケ担当者】広告・解析レポートをサクッと伝わるデザインにしてみよう!」|2025/7/16(水)
2025年スタートの新企画「ツール研究会」の第一弾は、「Canva」を取りあげます。 急なバナー作成やCTA差し込み、レポート用スライド作成 …
【コラム】生成AI時代、独自性・原体験をどうコンテンツに組み込んでいくのか
株式会社A-can 白砂 ゆき子生成AIが業務に浸透することで、コンテンツ制作におけるリソース配分は大きく変わりました。以前は原稿執筆の作業時間が最も長く、次に構成、そして …
【コラム】国家の統計データは、羅針盤であり内視鏡であり私たちの鏡です
アナリティクスアソシエーション 大内 範行8月1日に米国で発表された雇用統計で、過去の就業者数が大幅に下方修正されたことがニュースで話題になりました。 「いくらなんでも変わりすぎ」と …
仕事をする上で、ピントを合わせることを大切にしている。 筆者はカメラマンではないが、普段料理や愛猫の写真をよく撮る。オートフォーカス機能のお …