コラムバックナンバー
Option合同会社 柳井 隆道
発信元:メールマガジン2018年11月28日号より
よく「分析のアウトプットは次の行動につながらないといけない」と言われます。果たしてそんな必要はあるのか、もやもや感じることがあります。分析は本来中身を知る、知見を得ることが目的であって、必ずしも分析アウトプットのすべてが施策につながっていなくてもいいのではないでしょうか。
施策ありきのアウトプットの方向性にとらわれ、データを見ること自体の視野が狭くなるのもよくないのではないかとも思います。もちろん次の行動を導ければ理想ですし、分析にコストをかけるのであれば対価として行動の示唆は必要という考え方も理解できます。
ビジネスにおけるデータ分析の位置づけを考えてみましょう。
本来データ分析をしなくても正しいアクションができればそれでいいのです。正しいアクションをする精度を高めるため、アクションをするための合意を得るためにデータが必要なのであって、正しいゴールが見えているのであればデータは不要。アクションが勘と経験と度胸だけに基づくものであれば旧来のありかたで、それでは本当にそのアクションが正しいのかどうかわからない。そこでデータに基づいて知見を得て、その知見から次のアクションを導き出すのがデータドリブンのあるべき姿だと言われてきたのです。
つまりデータに基づいてアクションを導く過程でデータ分析というものがあるわけですが、実はアクションを導くことが目的であればその過程にデータ「分析」が必要ない時代が来ようとしているのです。機械がデータに基づいて正しい行動を導いてくれる、人間がその間のロジックを知らなくても。
たとえば現在の広告運用においてデータ分析を行って人間が適切なフリークエンシーの値を知る必要はあるのでしょうか。それを知る目的は運用においてフリークエンシーキャップを手動で設定する、つまり再現性を高めることであって、今後運用が自動化され、機械任せでうまくいくようになれば人間がそれを知る必要はなくなるのです。むしろ人間の仕事は正しく自動化の効率を高める(学習させる)ことになりつつあります。
施策の高度化によって一般的なマーケターにとって施策チューニングの細かいことは理解しにくくなっています。ほとんどのマーケターにとっては正しく施策を行えればいいのであって、ブラックボックスであっても正しく回る仕組みができていればいいのです。細かいプロセスは知らなくていい。マーケターだけでなく、マネージャーもそれを受け入れていくべきでしょう。
現時点ではデジタルマーケティングの施策において機械化がそこまで進んでいるのは広告運用やサイト内レコメンド程度にとどまっていますが、今後はサイト内施策全般においてもそのような方向で動いていくでしょう(接客の自動化など)。
施策のディテールは人間よりコンピュータが強いので、そちらに任せる。一方で機械が苦手とすること、データが少ないときのアクション、ストーリー・シナリオを考えること、プロダクトやオファーの内容を考えることにマーケターは時間を割くべきです。
もちろん現時点では何でもかんでも機械でうまいことはいくわけはなく、まだまだ多くのケースにおいて知見を得ることは重要です。しかし今後は施策が機械任せでうまく回るようになるでしょう。分析の価値も変わっていきます。
アナリストもそれを見越して自らの価値やデータ分析の位置づけを再考していくべきです。従来は「分析」と「施策」は直結すべきという考え方が主流でしたが、施策がツールによって行われるようになると「分析」と「施策」の関係をもう少し緩やかにとらえてもいいかもしれません。
とはいえ分析や説明責任は重要ではあるので、実はブラックボックスとされる機械学習の世界にもアウトプットを解釈する、意味を導き出す努力は行われています。それについては今後のメールマガジンで触れていきます。
東京大学を卒業後、webマーケティングやサービス企画、システム開発などに従事。
デジタルマーケティングの世界に落ち着き、事業会社、広告代理店を経て2014年に独立。
現在は大小さまざまの事業会社、広告代理店などに対して、テクノロジー観点からデジタルマーケティングの支援を行っている。データ計測の設計、実装から分析、マーケティングオートメーションや広告運用などの施策との連携まで扱う。
さまざまな規模の経験から、企業の身の丈にあったデジタルマーケティングの企画に強い。フリーランスで活動していたが、2017年から法人化。
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