コラムバックナンバー

前回のコラムでは「近年のデータ分析業界の変化について考える」と題し、私自身が起業して以降2年間で感じた変化について寄稿いたしました。
前回のトピックには入れなかったのですが、私自身に寄せられる相談のなかで「女性分析者」「分析者を目指す女性(学生含む)」からの相談も増えたように思います。具体的には今後のキャリア形成についてや、スキル獲得の方法についてです。今回は「女性にとってのスキル獲得」について思うところを書いてみたいと思います。

データ分析者・データサイエンティストはかねてより独立しやすい職業です。また、そのうえで効率的な働き方も追求しやすい職業であると思います。環境が整えば(セキュリティに十分考慮した上で)いつでもどこでも仕事ができます。負荷の高い演算はサーバーに実行させておき、その間で打ち合わせに行く、専門書を読む、メールに返信する……等、処理待ちの時間にも並行して色々なことができるため、効率良く働くことができます。これについては別途書きたいと思いますが、データ分析を生業として独立する場合にも、初期投資は小さくて済みます。

独立するとしても企業や組織に属して働くとしても、効率的に働き、仕事以外の自分自身のやりたいこと・あるいはやらなければならないことに時間を割くことは他の職種に比べてやりやすく、だからこそ女性にデータ分析のスキルを身につけて欲しいと日々感じています。空前の人手不足と言われる現在、そのなかでもさらに人手が足りないとされるデータリテラシーの高い人材としてのスキルを磨いておけば、市場からの評価も保つことができます。分析の専門家でなくとも、ビジネスパーソンとしての基本的なスキルになりますし、基本的な統計スキル、分析スキルが備わっていれば、新たな分野にスキルを広げることもやりやすくなります。

一方、スキル獲得に関しては億劫になる女性が多いことも事実です。理由は、時間的な制約、経済的な制約、心理的な制約、主にこの3つではないでしょうか。

1) 時間的な制約
これは女性でなくともよく聞く理由で、組織カルチャーによりけりではあると思いますが、平日の日中では所属企業や上長から(無償であっても)学ぶためのセミナー参加や学習のための許可が出ない、というものです。では就業時間外でと思っても、女性の場合、今度は育児・家事・介護など家庭の事情などで時間の確保ができないというケースはよく耳にします。

2) 経済的な制約
データ分析の講座は決してお安いとは言えないものが多いため、予算的な制約で断念するといったこともよく耳にします。所属企業からの支援があるかどうか、という点については時間的制約と相関するところがあります。

3) 心理的な制約
もともとのリテラシーやバックグランドから「興味はあるが文系出身であるため不安」というケースや、男性中心のコミュニティが多いため参加をためらってしまうというケースです。これは私も経験があり、私自身は臆せず参加していましたが、疎外感はありました。

上記のような制約を感じることなく、学びを求める人が学んで行ける場を今後は作っていくことが必要です。また、そういった場を提供していくことは、分析者としてのキャリアを重ねている人たちの役割かもしれません。独立・起業する分析者も増えましたが、分析者を育てる分析者も増えて来ました。そういった方たちと連携し、社会に貢献する分析者、データリテラシーの高い人材をより多く世に送り出せればなと思う毎日です。

コラム担当スタッフ

菅 由紀子

株式会社Rejoui
代表取締役

株式会社サイバーエージェント、株式会社ALBERTを経て、2016年に株式会社Rejouiを設立。DX推進支援、データ分析・利活用コンサルティング、データサイエンス教育事業などを展開。
統計ソフトRやPythonを活用した分析入門講座をはじめ、学生、企業、官公庁へ向けた統計・データサイエンス学習講座を提供。日本行動計量学会、WiDS TOKYO @ YCU、日本RNAi研究会等、数々の学会およびシンポジウムに登壇。自身がアンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価を受け、2021年度日本統計学会統計教育賞受賞。

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