コラムバックナンバー

前回のコラムでは「日本のHR tech における課題」として、HR領域のデータ取得については課題のある企業が多いということ、その改善には人事担当者のITリテラシー向上が必要であることを述べさせていただきました。
日本のHR tech における課題

先のコラムでも触れましたように「働き方改革」はいま大きな注目を集めています。今回は、実際のHR領域の分析で気をつけるべき点についてお話ししてみたいと思います。

経営者や人事担当者が解決したい課題は様々ですが、私が対応したなかでこの1年最も多かったものは「退職やメンタルヘルス罹患リスクの予測」でした。分析に用いるデータは様々ですが代表的なものとしては下記のデータが挙げられます。

– 属性情報
 性別・年齢・勤続年数・配偶者有無・家族事情の変化、健康診断の結果など

– 人事考課・人事評価
 対象者ごとの業務や評価、その履歴など

– 勤怠管理
 出退勤や残業時間、休日勤務などの時間数、有給取得日数など

– 従業員満足度調査(ES調査)
 企業に対してどのように感じているかのアンケートデータとその履歴

メンタルヘルスの罹患や退職を予測するモデルを策定しようとすると、共通して対面する課題があります。それは「実際の出現数(=退職者やメンタル罹患者の数)」が少ないということです。また、上記データを結合する過程で欠損する人も出てきます。そのため、基本集計時の比較においても母数の違いを慎重に確認する必要があります。少なすぎる場合は集計のみで終えるということもあります。また、機械学習や各種予測の手法を用いてモデルを作成する場合には正解数が少ない場合の対処を行う必要が出てきます。

また、昨今の「働き方改革」実践により、数年前のデータでは役に立たないというケースもあります。過去は全体的に残業の多かった企業が、現在はどの社員もほとんど残業がないということも多く(特に一定規模以上の企業においては共通してみられる現象です)、過去はメンタルヘルスの罹患に特徴的であった変数を用いても意味がないということもよくあります。世の中の変化により取得されるデータに変化が起きているわけですから、これらも考慮して分析する必要があります。

分析を行うに際しては「分析しようとする課題そのものに対する理解」が非常に重要ですが、この領域においては世の中全体の変化を把握するということ、加えて分析対象である企業の人事制度をしっかりと理解するということがこれに該当します。特にその制度に変化が生じたタイミングは分析に大きな影響があります。その変化が起きた際にはもちろんモデルの見直しも必要となります。HR領域に限った話ではないですが、データの取得背景をしっかりと把握しておくことは分析者にとって必須のスキルであると、改めて感じる次第です。

日本におけるこういったHR領域のデータ活用は未だこれからといったところもありますし、私自身はこういったものを活用できる企業とそうでない企業の二極化が起こるのではないかと予想しています。生産性を上げ、人々がより働きやすく、成果を挙げられる仕組みの実現(働き方改革)には、テクノロジーやデータの活用が不可欠な要素ではないかと思っています。

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コラム担当スタッフ

菅 由紀子

株式会社Rejoui
代表取締役

2004年株式会社サイバーエージェント入社。2006年3月に株式会社ALBERTに転じ、データ分析業務を担当。顧客行動分析やDMP構築アドバイザリー等多数のプロジェクトを担当。
2016年9月にHR&Learning 分野専門の分析会社 Rejouiを設立。
アナリティクスアソシエーションプログラム委員、データサイエンティスト協会スキル委員。
株式会社Rejoui 代表取締役をつとめながら関西学院大学大学院ビジネススクールの非常勤講師としても活躍中。

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