コラムバックナンバー
株式会社Rejoui 菅 由紀子
メールマガジン2017年10月25日号より Rejoui 菅 由紀子
前回のコラムでは「日本のHR tech における課題」として、HR領域のデータ取得については課題のある企業が多いということ、その改善には人事担当者のITリテラシー向上が必要であることを述べさせていただきました。
日本のHR tech における課題
先のコラムでも触れましたように「働き方改革」はいま大きな注目を集めています。今回は、実際のHR領域の分析で気をつけるべき点についてお話ししてみたいと思います。
経営者や人事担当者が解決したい課題は様々ですが、私が対応したなかでこの1年最も多かったものは「退職やメンタルヘルス罹患リスクの予測」でした。分析に用いるデータは様々ですが代表的なものとしては下記のデータが挙げられます。
– 属性情報
性別・年齢・勤続年数・配偶者有無・家族事情の変化、健康診断の結果など
– 人事考課・人事評価
対象者ごとの業務や評価、その履歴など
– 勤怠管理
出退勤や残業時間、休日勤務などの時間数、有給取得日数など
– 従業員満足度調査(ES調査)
企業に対してどのように感じているかのアンケートデータとその履歴
メンタルヘルスの罹患や退職を予測するモデルを策定しようとすると、共通して対面する課題があります。それは「実際の出現数(=退職者やメンタル罹患者の数)」が少ないということです。また、上記データを結合する過程で欠損する人も出てきます。そのため、基本集計時の比較においても母数の違いを慎重に確認する必要があります。少なすぎる場合は集計のみで終えるということもあります。また、機械学習や各種予測の手法を用いてモデルを作成する場合には正解数が少ない場合の対処を行う必要が出てきます。
また、昨今の「働き方改革」実践により、数年前のデータでは役に立たないというケースもあります。過去は全体的に残業の多かった企業が、現在はどの社員もほとんど残業がないということも多く(特に一定規模以上の企業においては共通してみられる現象です)、過去はメンタルヘルスの罹患に特徴的であった変数を用いても意味がないということもよくあります。世の中の変化により取得されるデータに変化が起きているわけですから、これらも考慮して分析する必要があります。
分析を行うに際しては「分析しようとする課題そのものに対する理解」が非常に重要ですが、この領域においては世の中全体の変化を把握するということ、加えて分析対象である企業の人事制度をしっかりと理解するということがこれに該当します。特にその制度に変化が生じたタイミングは分析に大きな影響があります。その変化が起きた際にはもちろんモデルの見直しも必要となります。HR領域に限った話ではないですが、データの取得背景をしっかりと把握しておくことは分析者にとって必須のスキルであると、改めて感じる次第です。
日本におけるこういったHR領域のデータ活用は未だこれからといったところもありますし、私自身はこういったものを活用できる企業とそうでない企業の二極化が起こるのではないかと予想しています。生産性を上げ、人々がより働きやすく、成果を挙げられる仕組みの実現(働き方改革)には、テクノロジーやデータの活用が不可欠な要素ではないかと思っています。
株式会社サイバーエージェント、株式会社ALBERTを経て、2016年に株式会社Rejouiを設立。DX推進支援、データ分析・利活用コンサルティング、データサイエンス教育事業などを展開。
統計ソフトRやPythonを活用した分析入門講座をはじめ、学生、企業、官公庁へ向けた統計・データサイエンス学習講座を提供。日本行動計量学会、WiDS TOKYO @ YCU、日本RNAi研究会等、数々の学会およびシンポジウムに登壇。自身がアンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価を受け、2021年度日本統計学会統計教育賞受賞。
2025/11/18(火)
【大型イベント開催】a2i秋の広告祭 デジタル広告の役割を再設計しよう|2025/11/18(火)
a2i秋の広告祭 デジタル広告の役割を再設計しよう デジタル広告のこれからを半日で学ぶ!豪華11名のスペシャリストが集結! デジタル広告のテ …
2025/10/30(木)
オンラインセミナー「Microsoft Clarity×GA4横断分析で実現するサイト改善」|2025/10/30(木)
ヒートマップやセッションレコーディングを導入しているものの、「何を見ればよいのか分からない」「改善施策に繋がらない」と感じたことはありません …
2025/10/16(木)
オンラインセミナー「Cookieレス時代に取り組むべき攻めと守りの計測方法」|2025/10/16(木)
近年、AppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)や各国のプライバシー規制強化により、従来のCook …
株式会社ナンバーの渋谷です。今回は「データ分析の民主化」が進む中で、その土台となる「データ整備」の重要性について考えてみたいと思います。 結 …
【コラム】広告の効果計測、誰を頼ればいいのか? ―混沌を乗り越える越境チーム作り
アナリティクスアソシエーション 大内 範行広告の計測まわりでふつふつと音を立てるマグマ溜まり 「最近の広告レポート、本当にこの数字に頼っていいのかが疑問なんです」 最近、こんな問いか …
【コラム】わからない・忙しい・お金がないをDMAICで解決する
運営堂 森野 誠之イントロ 小さな会社の支援をしていると、やることはわかっていても進まないことが本当に多いです。理由はほぼこの3つ。 わからない 忙しい お金 …