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今回のコラムは、「おむつとビール症候群」という、データ分析界隈で流行っている症例についてです。すでに多くの企業で発病していますので、耳にしたこともあると思いますが、「おむつとビール症候群」とは、データ分析の依頼者が「あっと驚くような発見」を期待してしまい、「当たり前の結果」を出してしまったデータサイエンティストと気まずい感じになってしまうという症例です。(いや、すいません、もちろん、僕がこのコラムのためにつくった造語です)

さて、今回、この「おむつとビール症候群」に関連して、3つのデータサイエンティストの記事に着目してみました。3つのリンクは記事の最後に記載していますので、ぜひご覧ください。

1つはアクセンチュアのデータサイエンティスト工藤 卓哉氏と保科 学世氏による対談記事です。もう一つは「銀座で働くデータサイエンティストのブログ」の記事、もう一つは「dataminer.me データマイニングやその周辺のお話を書くブログ」です。

3つの記事で挙げられた共通の課題が、まさに依頼者が新しい発見を期待することでした。データ分析で得られる知見に「新しい発見」は稀で、多くの分析のケースで「当たり前の結果」を導き出していると3つの記事が共通に述べています。時間とお金をデータ分析にかけたのに、当たり前の結果しか出さないなら「データサイエンティスト」はいらないと思われてしまうというのです。

dataminer.meの記事では、有名な「おむつとビール」のエピソードが流布され、依頼する側が無邪気に、ビッグデータやデータ分析に「驚き」を期待してしまう面があると指摘しています。

アクセンチュアの工藤さんの記事では、おむつとビールの話は、意思決定に使えるか、という視点でもう一歩分析を深めることで解けるだろうと指摘しています。もう一歩深く見れば、それが若いビジネスマンが多い地域、週末など特定のセグメントに偏っていることも考えられるので、そこを見ることで、実際のアクションにつながる分析になる可能性があり、意思決定に活かせる分析を意識するべきだ、と指摘しています。

銀座で働くデータサイエンティストは、データサイエンティスト自身も、実はこの「おむつとビール症候群」にかかっているのではと指摘しています。データ分析で新しい発見がありますよ、とセールスマンになってしまっている面があるというのです。そして、プロジェクトの最初にきちんと現実を共有しておくことが、この症候群から脱する最適な方法だと提案しています。

「データ分析は魔法の杖ではないし、何か見たこともない新しいものを生み出すものではありません」

最初に、そう伝えても悪い印象にはならず、多く場合むしろ信頼関係ができる、とマイナスをプラスに変えるべきだ、という指摘をしています。

どの指摘もデータサイエンティストに限らず、あらゆる分野に共通する話だと思い、興味深く読みました。私自身は、これに「おむつとビール症候群」と名前をつけて、早く治すべき病気としても、よいのではないかと思います。

本来データ分析は、当たり前の結果を出すことが多いですね。しかし、3つの点で、そのことにこそ価値があると思います。

まず、漠然とした経験や感覚でも、データや数値化して共有することで、意思決定や優先順位付けが明確になり、プロジェクトが格段にスピードアップします。

そして、プロジェクトの内側の人間は「お客様の視点」を忘れがちだという点があります。どんなに経験のある人でも、供給サイドの「当たり前」にはまって、お客様やユーザーが見えなくなってしまいます。データ分析で客観化して「お客様の当たり前」を伝えると、目が覚めて、内側に向いていた意識と視点が、お客様、ユーザーの立場に変わります。

最後に、これからの企業はむしろ「当たり前のことでもデータ化する文化」を持つべきだと思っています。小さなビジネスでも、日本を超えてビジネスが進んだり、異なるチームで問題解決にあたる場面が増えています。チームが違えば「当たり前」の感覚は違ってきます。データという共通の言葉は、チーム同士が、同じゴールに向けて進むアクセルになります。

季節の変わり目です。どうか「おむつとビール症候群」に注意して、迷わずデータ分析に取り組んでください。

ITpro「データ分析プロジェクトの成否を分けるのは『目的意識』と『課題認識』

銀座で働くデータサイエンティストのブログ
データサイエンティストがビジネスに貢献するために心得ておくべき『4つの定石』

dataminer.me データマイニングやその周辺のお話を書くブログ
『あいつ・・・なにやってるの?』データサイエンティストを殺す4つの環境

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■編集後記
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コラムで挙げたおむつとビールのエピソードは、「おむつを買った人はビールを買う傾向がある」というデータ分析による意外な発見の話ですね。
ウォルマートの事例だとか、若干都市伝説的な形になっていますが、実際は、1992年ごろ当時NCRのビジネスコンサルティングだったThomas Blischokが、Osco Drugsという小売ストア・チェーンの25店舗のレジスタから120万以上のトランザクションデータについて分析した話だとのこと。

ただ、実際にこのお店で商品の配置を変えたわけではないようです。もし、インターネットでビールを買った後、レコメンデーションでおむつを勧められたら、なんだこれは、と思うでしょうし、スーパーで買う人もビールはビール売り場で買うんじゃないの?とは思いますね。

なにしろ20年以上前の話ですので、この事例の真偽は誰もわかりません。
むしろ、人々の間で広がって語られ続けている、という面に改めて驚きます。データ分析にこういった意外な発見への期待が強くある、ということを意識してデータ分析に臨むことが必要ですね。

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