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AI関連の技術的なトレンドの変化が大きく、もしかしたら私たちの思考の一部は価値を失うのかもしれないと思ったりもします。何について考えるのが人間の価値として残るのだろうか、あるいは思考の価値は続くが一定領域はAIに置き換え可能になるだろう、そしてそれはどの領域かなどと思いを馳せてみます。

例えばかつて、何かの状況を示す数字を手で拾いながらまとめていた時代がありました。アクセス解析のデータであればWebサイトの状況の一部を後から疑似体験している感もあり、作業をしながら「なぜこの数値は増加したのか」「何が要因か」「関連領域にも影響があるのでは」と気付きや仮説を持つきっかけとなっていました。振り返ればそれは少し悠長な思考の時間だったかもしれません。

そのうちエクセルにまとめる作業は減りました。データはAPI経由のリクエストで取得できるようになり、ダッシュボードで状況は自動更新されるようになり、変化や要因のピックアップも条件的にはある程度自動で行えるようになりつつあります。専門家やプロフェッショナルを除く一般的なビジネス利用では、作業と状況把握とそれに伴う思考はある程度ツールに任せて、人間はその解釈と判断を中心に担っている感じです。

この先、例えばこの「解釈」と「判断」も、適切な命令文を投げかければそれらしき候補や案を複数提示してくれるようになるのでしょう。「型に沿った定型的な思考」「過去や経験に基づく思考」はAIに置き換えられやすいかもしれません。

データの探索や仮説検証の際にこのようなアシスタントの存在はとても助かります。何かを見出したり抽出したり、どの組み合わせが最適なのかや未来の予測の見積もりなど、積極的に取り入れていきたいところです。とはいえ半信半疑ですから検証や自分の思考も加えながらになるのでしょうけれども。

一方で、「これは感情に訴えかけてくる」や「これは道義的に良くない」や「やり方は遠回りだがこの方が良い」など、人間の価値観や基準の違いでプラスにもマイナスにも評価できるような内容は、人間の思考が重宝され続ける領域のように感じます。

そう捉えると、AIが提示したものを選択するのか不採用にするのか検証するのか、どのように受け止めて判断するかが人間の思考の役割に加わりそうです。誰もが従順なアシスタントの部下を持ち、適切な命令をしてその反応をどのように評価するか。これはこれで非常に高度な思考です。思考を誰かに肩代わりしてもらうのであればそのアウトプットを評価する基準が必要であり、それまで自身がどれだけ思考を重ねたかが評価基準に反映されるはずです。となると、人はAIに任せるような領域も思考を重ねた経験が求められ、結局人はあらゆる領域で思考を続けよ、というところに至りました。合っているのでしょうか。

あれこれ思いを馳せつつも、どのフェーズであれ何かについて一所懸命に考え抜く過程は自身に確実にポジティブに働くはずであり、他の領域の能力に必ず生きる力だと思っています。新しい技術は積極的に取り入れつつ、オールドスクールとして世の中に貢献するにはどう立ち回るべきかを考えていたいです。

コラム担当スタッフ

いちしま 泰樹

株式会社真摯
代表取締役
真摯のブログ

外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。

マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。

著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。

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