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KPI設計は上位に行くほど個性的になることがあります。そしてその個性が企業をユニークなものにすると思っています。

どの指標がビジネスの成長を計るキーなのかを選ぶ際、ゴールをKPIツリーで分解してそこからピックアップするという手法は比較的見られる手法です。自分の担当領域があってその目標値が定められていれば分解もしやすく、なぜそれを選ぶのかという根拠も提示しやすいです。

一方、経営に近い層になると「描いている世界」にどのように向かうのかというフワッとした内容のときがあります。「売上○○億円」といった金額なら要素へ分解しやすいのですが、ユニークなビジネスの場合は「概念の設計」のようなものです。可能性のある要素を並べて組み合わせて優先順位を考えたり、他にも手法はあるかもしれません。

要素も(それは最終的に指標になるわけですが)「なんとなくそんな感じがする項目」があってもおかしくありません。ふんわりとした世界観を分解しているのでそういうこともあるでしょう。もちろんデータの根拠をもってロジカルに組み立てられることもあるはずです。

重要なのは仮説の合意です。オペレーションを担うメンバーが関係者に含まれているべきでしょう。そして挙がってくる指標が具体的で計測可能かどうかを確認すること、もしくはそのような指標候補を提示すること。チームや支援側はどれだけ現実的なものに置き換えられるかや計測実装できるかを支え、仮説に合意することが重要になります。

あまり多くはありませんが、過去に数回そのようなシチュエーションを経験したことがあります。あるときピックアップされた指標は「ある一定の基準を満たした客数」でした。しかしその「一定の基準」には明確に答えられる根拠はありません。「その下の基準だと数字が大きくなってしまう」「なんとなくその辺りが妥当だと思う」。そんな感じです(もちろん過去データの集計と分析からなんとか算出できたかもしれません)。経営者のセンスかもしれませんが、企業としての個性だとも思います。同じ立場であれば私もその基準を選択するだろうという漠然とした感覚もありました。そしてプロジェクトを前へ進めるために大事だったのは、「計測できる数字であり、具体的で実感として妥当で、その数字を一定のポジティブなところまでコントロールできそうだという共通認識」という同意でした。

もちろん、自分の担当領域であれば順当に因数分解してよいと思います。施策に近い現場になるほど一般的な項目に分解されるものです。その中でも、例えば「客数」という変数が出てきたとき、「すべてのお客様」とするのか「特定条件のお客様」とするかは一つのテーマです。それも分解できればしていくわけですが、何も視点やデータを持ち合わせていなければ条件を加えられません。そのあたりに企業として個性が出るのだと思っています。

項目への分解は必ずしもMECEでなくてよいとも個人的には思っています。KPIとしてピックアップするのはその中の少数です。特定の要素を見極められて、具体的な数字で計測可能な状態であればいいはずです。

突き詰めれば最適なKPIを選択できるかは永遠の旅です。折り合いをつけて向き合い、そのとき選んだKPIを良い方向に向かわせることを意識したいです。

コラム担当スタッフ

いちしま 泰樹

株式会社真摯
代表取締役
真摯のブログ

外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。

マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。

著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。

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