コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2022年8月10日号より
ある種のプロフェッショナルは徹底した計測やログ化を行動のベースとしていることがあります。ストイックだったり忍耐強かったり常人とは違う習慣だったりしますが、それを積み重ねて自身の業務やパフォーマンスの改善につなげているところは大いに参考になります。
そういう話は直接聞いたりメディアや記事で見ることが多い印象ですが、まさか匿名質問サービスの回答でそれを見かけるとは思っていませんでした。
料理人で飲食店プロデューサー、南インド料理店「エリックサウス」の料理長として知られるイナダシュンスケさんによる匿名質問サービスでの回答です。引用しようと思うも文章のほとんどを引用しかねないため、ぜひ全文を読んでほしいのですが、要旨としては以下のような内容です。
・遅くに料理の世界に入り、年下ヤンキー先輩の圧倒的レベルに追いつくには計測しかないと思い至る
・先輩の目を盗んで調理前後の調味料を計測、調理の様子をガン見して推量、自身の調理でも計測
・南インド料理の世界に立ち、再びインド人コックから同じことを行い、計測に計測を重ね、いまに至る
なぜそのような結果になるのか、最適解は何なのかを得るために、その途中のプロセスを分解する作業をしているのだと思います。それに必要なのがデータで、多くは計測しなければ得られません。「なぜそうなるのか」にも多くの思考を重ね、「他に要素や切り口があるのでは」という仮説から追加の計測も重ねています。
イナダさんの場合は、料理のレシピや技術、得ることが難しい感覚のようなものを習得するために、計測し、それらのログから解を読み解こうとしたのでしょう。
・関与するあらゆる要素や切り口を計測
・なぜそうなるのかを突き詰め、試行錯誤
・それを継続
詰まるところ「事実の把握、解釈、仮説、試行」の繰り返しです。これを一人で追求すると孤高のプロフェッショナルに至るのでしょう。
いまはさまざまな情報が公開されていますし、チームや組織で取り組めば違うやり方で進めます。機械学習で答えを探すこともできたりするのでしょう。一方で「事実の把握、解釈、仮説、試行」の繰り返しで得られるものにこそ、チームで展開する際のヒントがあるように感じます。少なくとも自身の成長という点ではそれが最短距離というのはそのとおりです。
イナダさんのすごさはこういうところにあったのかと納得しつつ、この文章をおそらくそこまで時間をかけずに書いただろうことにも感嘆します。Twitterでフォローしていて偶然見かけたものですが、唐突に良いものを読んだ感がありました。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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