コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2021年6月16日号より
いま、「iPhoneのプライバシー」と題したAppleのCMをテレビでもオンラインでも見かけます。
「ううむ」と少し説明しにくい思いを感じながら見るのですが、「データのオーナーシップをユーザーに戻す流れ」は速くなりそうです。Cookieへの規制に始まったこの流れにより、デジタルマーケティング領域における「トラッキングデータのみに頼ったデータドリブンマーケティング」は後退するのでしょう。
トラッキングしたデータ、Webサイトのアクセス解析やアプリの分析、広告の効果、それらから作り出されたオーディエンスデータなど、それらへの1本足で何とかビジネスを回していたところは、それらデータの精度の劣化に伴い、別の軸を持ち合わせなければいけなくなります。その際の視点のひとつは「顧客の理解」でしょう。
単に「顧客の理解」とすると輪郭がぼやけた感じですので、「顧客に支持されている度合い」と少し方向を定めてみましょうか。
・認知度
・実際の接点の頻度と反応
・可処分時間に占める体験時間の割合
・ファネルやカスタマージャーニーにおけるステータスや行動内容
・LTVや収益性としての貢献
・顧客の分類とその傾向、NPS
関連しそうなデータの例をいくつか挙げてみました。ビジネスによっては他の要素も挙がるでしょう。上記の中には精度の粗いデータもありますし、一部ではトラッキングデータも用いることになります。
デジタル領域のトラッキングデータもユーザー軸に移行するなど顧客理解に向けて動いていましたが、高い精度での大きな前進は期待できなくなりました。上記の例の中でも正確なデータは実際の顧客データや売り上げデータぐらいで、その他はすべて「支持されている度合いを類推するための補足のようなデータ」と言えるかもしれません。トラッキングデータはより刹那的な効果検証データの集合体、という感じでしょうか。
複数の軸を持つこと。それら複数の軸で、適切な投資に対して顧客にどれだけ支持を得られているかを判断していくこと。限られたトラッキングデータだけでの判断は日増しにおぼつかなくなる、そういう2020年代前半のようです。
さて余談です。冒頭に紹介したiPhoneのプライバシーのCMについて、長くWebサイトをはじめとしたデジタルデータの計測と分析に携わってきた身としては、一言で表しにくい感情です。一人のユーザーとしては「気付かぬところで行動や属性や趣味嗜好、その他の個人的な情報が記録されターゲティングされていく居心地の悪さ」は感じます。一方で仕事面では、計測できて当然と思われていたデジタルデータの精度が粗くなり細切れになり、その中で分析を行う苦悩や、この一連をクライアント様にどう説明したものかという苦悩を抱えたりもします。そしてその狭間で、両者に折り合い付けられないまま現在に至った申し訳なさも重なり(誰に対しての申し訳なさだろう?)、まあつまり「複雑な思い」です。皆さんはどうですか?
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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