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調べ物で検索していると、それっぽい内容のページのはずなのに、テーマの本題がページの後半から始まるようなページに出会うことがあります。冒頭から前半にかけて無関係な話題というわけではなく、「そもそも○○とは」と前提のそのまた前提から解説している印象です。例えばこのコラムの冒頭で「そもそもアクセス解析とは」と400文字の解説が始まっても、まあ多くの場合、読まないですよね。コンテンツマーケティングの取り組みの普及もあって、検索エンジンからより幅広い検索クエリでのトラフィックを期待しているのかもしれません。

では、そのような冒頭の本題ではない部分は、その後のユーザー行動やコンバージョンにポジティブに貢献したり、あるいはネガティブに作用したりしているのでしょうか。単なる検索経由のトラフィックの質量なら把握できますが、「実際に読まれているのか」「肝心な部分の邪魔をしていないか」「必要なのか不要なのか」を評価するのは、意外にむずかしいです。Googleアナリティクスなどでページスクロールの計測をしても、それは「地点の通過」の計測にすぎません。

評価ができるかもしれないツールを3つ挙げてみます。

1)ヒートマップツール
2)セッションレコーディングツール
3)A/Bテスト

ヒートマップツールでは、ページごとに詳細なスクロール状況がわかります。ユーザーが閲覧中にスクロールを止めたなど「注目して閲覧している箇所」を表現するアテンションヒートマップの機能があれば、冒頭の本題ではない部分が読まれているか否かの判断ができます。ただし、そのページ構成がその後のユーザー行動やコンバージョンにどう影響を与えたかは、評価は難しいはずです。

セッションレコーディングツールは、実際のユーザーの閲覧の様子を録画再生するツールです(時間が溶けてしまうツールでもあります)。個のユーザー行動を追うのに適したツールで、ページをどのように閲覧したかを再現します。おもしろいツールですが、ユーザーが予想よりもはるかに「コンテンツを読んでいない現実」も教えてくれます。セッションレコーディングですので、その後のセッション行動も把握できます。最近利用が増えているだろうMicrosoft Clarityであれば、Googleアナリティクスとの連携でユーザー軸での把握にも踏み込めます。

ただ、冒頭の本題ではない部分は「本題に到達するには必ず通過せざるを得ない箇所」でもあります。ユーザーは「あれ、本題はどこからだろう、この辺かな? この次かな?」と思いながら、読むというより表面を眺めるようにスクロールします。それは閲覧の質としては高くありませんが、結果に表れにくい内容です。

結局は、本題ではない部分の「あり」と「なし」の両方のページを準備して、A/Bテストするしかないのかもしれません。単一ページで行っても評価しにくく、かといってサイト全体でやるには工数が大きすぎます。もしかするとそれでも有益な結果が得られないかもしれません。

個人的な意見では、検索エンジンに対しての評価のために本題ではない部分を追加して、それでUXを損なっているのであれば、やめた方が良いだろうと感じます。もちろんサイト構成に左右されますし、キャンペーン向けランディングページのように単発のページかどうかでも、含めた方が良いケース、そうではないケースはありそうです。

コンテンツを無駄に肉厚な状態にしているのであれば、例えるならエビフライの衣を多めに付けて、味よりも見栄えのリッチさを優先しているという意識であれば、おそらく人間の評価も検索エンジンの評価も近いものになっていくはずです。

冗長な内容のコンテンツを増やしていないでしょうか。読まれるコンテンツを作っていきましょう。お互いに。

コラム担当スタッフ

いちしま 泰樹

株式会社真摯
代表取締役
真摯のブログ

外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。

マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。

著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。

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