コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2021年4月14日号より
数字を追いながら何か状況の改善を進めているとき、ゲーム的な楽しみを感じ始めたら立ち止まった方が良いです。数字の向こう側にいるユーザーへの意識がおざなりでいい加減になっているときかもしれません。
可視化やダッシュボード構築の取り組みが増えました。リアルタイムとまではいかなくても、前日のデータを元にディスカッションしたりすぐに施策に反映したりする企業もあるかもしれません。データの根拠に基づく改善の意識が高いのは良いことですが、ダッシュボード上の数字だけで即時的に判断する怖さも感じます。
注視しているKPIや指標が改善するのは気持ちがいいです。施策を行ったり修正したりした後に期待するような数値の向上が見られたら、さらにその上を目指せないかと当然考えます。それを繰り返すうちに、ゲームのように「その数字を向上させること」を目的にし始めると注意信号です。ユーザーや本来のゴールを見失い始めます。
改善施策の中でも特に、人間の認知バイアスや反射的な反応を利用した施策は、一時的には良好な状況を示します。しかし、長期的なエンゲージメント、LTVや顧客維持の側面ではネガティブな作用を起こしがちです。「思わずクリックしたくなる要素」「無意識に射幸心をあおられた申し込み」といった一部のハックに見られるようなものです。このようなバイアスや反射的な反応を利用した改善を行う際は、ユーザーはそれをどう受け止め認識するのか、長期的な関係性にどのような影響を与えるのかといった議論を踏まえるべきでしょう。ゲーム的に改善活動を行っていれば、取り入れがちな施策です。
業界で知られるようになったベストプラクティスや標準化されたノウハウには、このようなものを含んでいるように感じます。ネガティブな作用は年月を経なければ表に出てこないことも多く、前任者や前の支援企業による取り組みの影響に悩まされる、という話も耳にします。
もう一つ、経験上、プロジェクトやキャンペーンや施策が細分化して組織や担当者が分かれるほど、数字だけでの判断が起きやすいように感じます。自分の担当領域を守る、自分に課せられたゴールを達成する、という方向に向かいがちだからです。人事評価と紐付いていればなおさらやっかいかもしれません。
プロジェクト全体のゴールや目的を見失わないこと、数字の裏側のユーザーへの意識を忘れないこと。新年度になり、新たなプロジェクトの改善活動がスタートするのであれば、気に留めてほしい事項です。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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