コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2021年1月20日号より
昨年12月、新しいChromecastを購入しました。独自リモコンが付いて、Google TVのプラットフォームでコンテンツを利用する「Chromecast with Google TV」です。
リビングのテレビに接続しコンテンツを視聴して、「大画面は正義」「スマホじゃない」などひととおりの印象を感じていましたが、その後、YouTubeを視聴していて従来の視聴体験と異なることに気が付きました。
・視聴以外のエンゲージメント発生が少ない世界である
・概要欄を見ることができない
・コメント欄を見ること、付けることができない
・チャンネル登録や高評価などはできるが、一手間かかる
・その結果、動画をじっくり見るようになる
■視聴以外のエンゲージメントが少ない世界
「視聴以外のエンゲージメントが少ない世界だなあ」というのが大きな印象でした。利用して1時間も経たない中での感想としてはやや職業病的ですが、「視聴する」以外のアクションは省略されたり隠されたりしていると感じました。独自リモコンを操作UIとしていることもあり、従来のスマートフォンアプリやPCでのYouTube利用と比べて、より「視聴を重視」している印象です。
概要欄やコメント機能を利用できないというのには少し驚きました(私が気付いていないだけで、利用できるのかもしれません)。従来の利用では「動画を視聴しつつ概要欄やコメント欄を眺める」という視聴をすることがありますが、新しいChromecastではそれができません。必然的に「動画をじっくり見る」ことになります。従来のChromecastではテレビに映像をキャストしつつアプリ側で概要欄やコメント欄も利用できましたが、そのような利用もできません。
Google TVのYouTubeアプリでは、URLクリックを介したWebブラウジングを求めていない(できない)ことに関係していると推測します。動画の発信側は概要欄やコメント欄を積極的に利用していることも多く、その面で情報の途切れが発生するかもしれません。
また、私はYouTube Premiumを利用しているため途中の広告は入らないのですが、通常挿入されるYouTube広告もよりテレビCM的に感じるかもしれません。広告のクリックも発生しないように思います。
再生速度の変更もできず、早送りといった操作もリモコンでは一手間かかる印象です。今後のUI変更で変化はあると思いますが、「新しいChromecastを使ったGoogle TVでは、動画をじっくり視聴してもらう」という設計思想を感じます。
■プラットフォームが異なれば指標の価値も本来は異なるけれども
そこで思うのが、「プラットフォームが異なれば指標の価値も本来は異なるけれども」という話です。視聴回数や再生時間、コメント数といった指標の価値は、さまざまな要素で変化することを理解すべきだけれども、結局は一周回ってそれらの指標をシンプルに扱ってもいいだろう、というものです。
例えば視聴回数「1」の価値は、視聴端末やプラットフォーム、視聴姿勢や視聴意図で異なり、それを踏まえて本来は解釈をすべきです。YouTubeのフィードや関連動画へのレコメンドロジックなどでは、ざまざまな属性別での各指標は調整されているのでしょう(そしてその内容を知る術はありません)。動画配信側も動画の評価の際に、独自の追加調査をしたり、評価軸を組み合わせたりしてよいのかもしれません。一方で、追加の調査をしてもなかなか本質にはたどり着けず、厳密さを求める評価がビジネスとして割に合わないケースもほとんどです。単純化した指標として扱いつつ、脳内で補正や補足をするところに着地します。
我々はWebサイトのページビューの価値はさまざまであるという前提を理解しつつ、一周回ってページビューの指標を扱います。私はそれで良いと思います。例えばページでは別途ヒートマップでの分析をする場合があるように、視聴者維持率の推移で視聴の熱量を推測する感じになるでしょうか。
端末やプラットフォーム、姿勢や意図などの多様性で、指標の価値は変化します。データや思考の前提として、理解していたいです。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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