コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2020年7月29日号より
多くのデータの中から自分の主張に都合の良いものだけを選び、それを有力な根拠として提示する、という手法があります。あまり褒められたやり方に聞こえませんが、実は一般的に見られる手法です。私たちは商品のメリットに魅力を感じてそれを選びますが、ウィークポイントはあまり表には出てきません。
このような手法をチェリーピッキングと呼びますが、データを根拠として取り扱う人が現状把握や仮説検証にこれを用いるのは、適切ではありません。客観的な視点ではないからです。
例えば、自分たちの提案を選んでもらうために、特定の一側面の根拠を強く主張して危機感をあおり、作為的に提案の同意へ誘導するケースもチェリーピッキングの一つです。営業の側面では比較的見られるケースのように感じます。新たな取り組みを進める際にそのように推し進めるのは否定しませんし、過去に提案の場面でそのような見せ方をした経験もあります。多かれ少なかれ商品やソリューションはその一面を持っており、それを選んだ者が得られる利益に満足すれば良いと思います。
しかし、現状を客観的に把握する場面や、仮説をもって事象を精査する場面では、中立性が求められます。チェリーピッキングは利己的に働き、主張する側に有利な情報だけが根拠として並びます。そうすると、解釈や判断が偏ったものになってしまいます。
データを扱う人たちは、事実を多くかつ多様なものを集め、それを要約して評価し、次の方向性を提示する、という過程に携わっています。
1. 事実を多くかつ多様なものを集める(空)
2. 要約して評価する(雨)
3. 次の方向性を提示する(傘)
これは以前紹介した「空・雨・傘」と呼ばれる考え方です。「空が曇っている(事実)、雨が降りそうだ(解釈)、傘を持っていこう(判断)」というものです。
もし「1」で一側面だけの事実しか集めなければ、あるいは「2」で一側面に偏った評価をしたとすれば、「3」で誰が選んでもその方向に向いてしまうということが起きます。現状把握ではネガティブな印象をポジティブに変えられますし、仮説検証では偏った意見を支持する根拠のみを提示できてしまいます。
1から3まですべてに関わらなくても、1や2にはデータを扱う人たちの多くが関わります。現状把握や仮説検証で重要なのはまずは事実の把握です。解釈は自由ですが、恣意的に事実から一側面を隠してはいけません。
データは嘘をつかないはずなのですが、残念ながら嘘つきはデータを使います。私たちはまず事実を適切に流通させるところに関わっていたいです。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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