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新型コロナウイルスCOVID-19の拡散に伴い、多くの深刻な情報が日々飛び交っています。事実と異なる、いいかげんな噂話も飛び交い、トイレットペーパー等の日用品が店頭から消えるという事態に陥っています。WHO(世界保健機関)は、このような状況を「インフォデミック(infodemic : information pandemic)」と呼び、警戒を呼びかけています。根拠に乏しい情報がSNSを介して大量に拡散することは、緊急時に限らずとも防がねばなりません。今回はインフォデミックが起きる背景とその解決策について考えてみたいと思います。

今回のインフォデミックは「エビデンスベースト(Evidence-Based)の欠如」そして「データを読み解く力の欠如」が原因であると私は考えています。もちろん、新型のウイルスであること、目に見えないものであることなど心理的な不安を誘ういくつもの要因があることも確かでしょう。

エビデンスベーストは「根拠に基づいた」という意味で、ビジネスシーンですでに浸透した考えです。私達は日常的にビジネスにおいて「相手を説得する」ことを行っています。そして、人を説得するには「根拠」や「証拠」が必要です。

今回、情報に振り回されている方たちには「エビデンスの確認」が欠けています。情報を得た際にはその情報の一次情報を参照することは基本で、それがどこから/誰から、いつ発信されたものか、もし二次情報までにしかたどり着けないとしたら情報源はどこなのかを押さえておけば、これを防ぐことができます。

エビデンス=「根拠」「証拠」ですが、これを語るのに最もパワフルなのが「数値」「データ」です。数値で語る(=定量的に語る)ことで他と比較したり、位置づけを語ることができ、相手に誤解されない形で伝えることができます。しかし、今回はデータの取得背景が明かされてなかったり、比較する軸が異なっていたりと「データを読み解く力」がなければ惑わされてしまう情報が錯綜しています。では、そのような情報の本質を見抜き、データを読み解くにはどのような点に気をつければよいのでしょうか。見抜くためにはいくつかポイントがあります。

まず「絶対値なのか比率なのか」という視点です。感染者の絶対数での比較と、感染率で考える場合とでは意味合いが全く違います。感染を「率」で考えたとき、母集団となるのは検査をした人です。

同時に比較してよいデータかどうかを見極める必要もあります。政府発信の統計データであったとしても、感染者数の集計基準が変更になると、時系列での感染者数の増減は捉え方が違ってきます。

都合の良いデータのみを用いていないか、可視化グラフに恣意的な表現が用いられていないか、相関関係なのか因果関係なのか。確認するポイントは他にもあります。データを読み解きエビデンスで語ることはビジネスパーソンとしての基本姿勢です。情報に惑わされず適切な意思決定を行うためにも、その基本姿勢を忘れずにいたいと思います。

コラム担当スタッフ

菅 由紀子

株式会社Rejoui
代表取締役

株式会社サイバーエージェント、株式会社ALBERTを経て、2016年に株式会社Rejouiを設立。DX推進支援、データ分析・利活用コンサルティング、データサイエンス教育事業などを展開。
統計ソフトRやPythonを活用した分析入門講座をはじめ、学生、企業、官公庁へ向けた統計・データサイエンス学習講座を提供。日本行動計量学会、WiDS TOKYO @ YCU、日本RNAi研究会等、数々の学会およびシンポジウムに登壇。自身がアンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価を受け、2021年度日本統計学会統計教育賞受賞。

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