コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2019年9月25日号より
ダッシュボード作成では、事前に全体像を描かずにツールに向かって「ダッシュボードを作るぞ」と着手すると、失敗します。事前の準備が重要という当然なことではあるのですが、往々にしてその失敗は繰り返されます。
Google データポータルは無償で気軽に利用できるBIツールですが、Google データポータルでのダッシュボード作成は、他ツールと異なるプロセスを進んでいるように感じます。「構成も各チャート詳細も決定した上でのダッシュボード」の作成が求められていて、その前提でのプロセスが提示されます(Google データポータルにそのつもりがなくても)。
例えばGoogle データポータルでは、データソースと接続するとすぐに「ダッシュボード作成」の画面になり、「グラフの追加」でどのチャートを追加するかを求められます。まだ何一つ必要なチャートが揃っていない中で、ダッシュボードを構成することになります。本来であれば、作成者が事前に下書きやワイヤーフレームを準備していたり、頭の中にある程度の構成が見えていたりする必要があります。
改めて、ダッシュボード作成のプロセスの例を考えてみます。
1. 利用者は誰か、目的は何か
2. 各要素(チャート)でどのようなインフォメーションをどう伝えるか
3. ダッシュボードのサイズやページ構成
4. ページ内の構成要素と配置
5. ページにストーリーがあるか、理解しやすいか、アクションを誘発するか
6. 必要に合わせたインタラクティブ性
7. 表現や体裁の統一
この他にも、使いやすさやKPIの変化に応じて修正や追加などの調整があります。
Google データポータルでは、ツールで求められる初期のアクションが「チャートの作成」ではあるものの、同時に「ページ内の構成要素と配置」「インタラクティブ性」「表現」を考慮しながら進める必要があります。当然ながら、データの取りまとめや計算指標の準備といった裏側の処理も同時に必要です。しっかりしたものを作成するには複数の役割が同時に求められています。
ある程度の全体像を準備して臨んでも、結局は作成しながら試行錯誤をすることになり、効率が悪いと感じることがあります。良いダッシュボードの出来にするには、なかなかハードです。
そもそも、私たちの多くは「データを集めて整理し、インフォメーションに変換し、どのように伝えるか」という教育を受けていません。データをどのように表現(ビジュアライズ)するか、どういうときにどのようなチャートが適切なのかを知らないのです。私も、円グラフがチャートとして機能するのは限定的な条件のときのみというのを理解したのは、Tableauの思想やポリシーに触れた頃だったように思います。
Tableauが、どのチャートがふさわしいかを意識させないフローになっているというのは興味深い発想です(Google データポータルでは最初にチャートの種類の選択を求められます)。加えて、Tableauではあくまでチャートごとに意識を集中できます。チャートを作り込んだ後に、ダッシュボードをどうするか、どのチャートを構成して組み合わせるかという段取りを取れます。事前準備を切り分けられるのです。ダッシュボード作成の前のプロセスを分割して、段階を踏んで進めるようになっているのがGoogle データポータルとの違いです。
さて、Google データポータルにどう向き合っていきましょうか。
無償で気軽に取り組めるツールですし、Google アナリティクスとの親和性も高いです。まずは「便利なレポートを作成する」という意識でも良いのかもしれません。
スプレッドシートやGoogle アナリティクスでは表現しにくいレポート、このチャートとこのチャートが同じページに表示されると便利かも、というような気軽な意識で向き合っても良いように感じます。「ダッシュボードを作るぞ」という意気込みで向き合うと、着手前の事前準備と試行錯誤が大変で頓挫しがちです。ダッシュボードの束縛から少し逃れれば、「拡張性のあるインタラクティブなレポートの作成」など有効なレポート設計につなげられます。
いくつかそのようなレポートが揃ってきてからダッシュボードとしてその中の要素を流用する方が、スマートに進められるかも知れません。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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