コラムバックナンバー

データサイエンティスト協会スキル定義委員として、スキルチェックリストおよびタスクリスト見直しを行っています。本リストでは、データサイエンティストに求められるスキルを「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」の3分野に分けて定義しており、さらにその分野それぞれのレベルを、業界を代表するレベル/棟梁レベル/独り立ちレベル/見習いレベル、としています。現在は2017年に更新されたVer.2が公開されており、進化が加速度的であるこの領域のスキルリストを刷新するべく、2019年10月の公開を目指してスキル定義委員で討議しています。発表までに変更されるところもあるとは思いますが、今回のコラムでは、現時点で感じていることをお話ししてみたいと思います。

現在のスキルチェックリスト(2017年版)はこちらからご確認いただけます。

■レベルの見直し
現在、ちょうど「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」3領域について委員から変更案が提示され、それぞれの領域内だけでの修正ポイントが明らかになったところです。新技術の登場で新たに加わったスキルもありますが、レベルが棟梁レベルから独り立ちレベルに、あるいは独り立ちレベルから見習いレベルに下がるものが結構な数存在しています。これは、技術の進化、とりわけ分析や開発のライブラリが豊富になってきたことで個別の実装が不要となってきていることが影響しています。たった2年とはいえ、テクノロジーの進化がこれを引き起こしているわけですが、その進化の速さを実感するとともに、ライブラリの多用・乱用により分析アルゴリズムや手法の本質を見落とさないようにしなければ、と気が引き締まる思いです。

■複数領域にまたがるスキルの増加
データサイエンティストには「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」の3つをバランスよく持ち、ビジネス課題に答えを出すことが求められます。これらのどちらにも該当する、あるいは全てに該当するスキルも当然ありますが、領域が変わる、あるいは横断するスキルが増えそうだと感じています。2年前はエンジニアリングのスキルと位置づけられていたが、汎用的なツールやライブラリが増えたことなどによりデータサイエンスのスキルに移ったものや、データサイエンスのスキルであったが、プロジェクトの上流工程で当該スキルが求められることが増え、ビジネス力のスキルと横断的になったものも出てきました。まさにデータサイエンティストは横断的にスキルを持っておかなければならないことが如実に表れてきていると感じています。

この領域は進化が早く2年に一度の刷新では今後は間に合わないかもしれません。討議している間にも、次々と技術は進化していきます。新たな刷新方法を検討する段階にも来ているのかもしれないと感じる毎日です。

コラム担当スタッフ

菅 由紀子

株式会社Rejoui
代表取締役

株式会社サイバーエージェント、株式会社ALBERTを経て、2016年に株式会社Rejouiを設立。DX推進支援、データ分析・利活用コンサルティング、データサイエンス教育事業などを展開。
統計ソフトRやPythonを活用した分析入門講座をはじめ、学生、企業、官公庁へ向けた統計・データサイエンス学習講座を提供。日本行動計量学会、WiDS TOKYO @ YCU、日本RNAi研究会等、数々の学会およびシンポジウムに登壇。自身がアンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価を受け、2021年度日本統計学会統計教育賞受賞。

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