コラムバックナンバー

Googleアナリティクス、Adobe Analyticsなどのウェブ解析ツールというのは、

– 計測=JavaScriptなどでデータを収集して蓄積する部分
– 解析=蓄積したデータを表やチャートにして表示する部分

で構成されています。

最近のGoogleはアナリティクスは計測ツールであり、解析はBigQuery(有料版の場合)やデータポータルの仕事だとするスタンスを強めてきています。Googleアナリティクスを解析ツールではなく単なる計測ツールとして見る方向ですよね。

先日計測の選択肢としてこんなものがリリースされました。

Ingestly
日本語の説明

オープンソースのウェブ計測ツールです。JavaScriptに加えて、データ収集サーバとしてFastlyという高機能CDNを使ってウェブの行動を計測します。計測したデータ(行動のログ)はGoogle BigQueryやその他ストレージにCSVファイル出力することが可能です。

現在、ウェブの分析は集計ベースから行動ベース、ログベースに進化しつつあります。「ページごとの閲覧時間」や「流入元ごとのコンバージョン数」などといったセッション単位の決まった指標の集計データだけでは有用な知見を導くことが難しくなっています。そんな中ログベースの分析の重要度が増しているわけです。

ところがGoogleアナリティクスで集計されていないログを扱うためには有料版が必要となります。当然それ以外のAdobe Analyticsなどのツールも有料になりますし、それなりに高額です。

このツールを使えば低コストでログ分析に挑戦できるのです。あくまでログの出力までしかしないので、その後の集計や可視化は自前でやる必要があります。ただこれまでスモールスタートでのログ分析の選択肢がなかっただけに、新しくこういうツールが出てきたのはありがたいところです。ログ分析の民主化といえるでしょう。

オープンソースなのでプログラム自体は無料で使えます。コストはデータを格納するBigQueryのコストと、計測サーバとなるFastlyの利用料程度です。使い方にもよりますが、これらは月額1万円もあれば月間2-3千万以上のヒット(サーバーコール)を送ることが可能です。

Ingestlyの特徴はリアルタイムでウェブの行動を計測できるところです。

計測対象はページビュー(誰がいつどのページを見たか)だけでなく、デフォルトでスクロールや動画再生のトラッキングも可能です。また特定の要素のクリックのトラッキングも簡単にできます(HTMLのエレメントに属性を追加するだけ)。Googleアナリティクスではサンプリングされてしまうページの読み込み速度も計測しています。

またFastlyのエンドポイントに自ドメインのANAME/CNAMEを割り当てることができます。つまりファーストパーティドメイン運用ができる、将来にわたってもITPの影響を最も受けにくい方法をとることができるのです。CNAMEを割り当てなくても現時点では何段階かのフォールバックでITPを回避しています。こと計測についての機能はGoogleアナリティクスより優れているかもしれません。

ただあくまで計測ツールであり、解析の機能は提供していません。出力されたログから解析するにはクエリを書く必要があります。
ログは欲しいが、あまり高額なツールを導入する予算はないという方。でもクエリを書いて自前で分析することはできる(その意思はある)方にお勧めです。まあGoogleアナリティクス360やAdobe Analyticsのデータフィードを使ったところでログ分析をするにはクエリを書く必要があるのは変わりませんが・・・
スタートアップ企業には向いていると思います。

BigQueryで集計し、Re:dashで可視化するなどという使い方もいいでしょう。Re:dashのSankey Diagram
を使うとGoogleアナリティクスの行動フローと同じものも作ることができます。

オープンソースのイケてるツールを組み合わせる、こんな選択肢もあるということを紹介しました。少し高度ではありますが、これからのウェブ解析の専門家はこういうツールの存在は知っておくべきかもしれません。

コラム担当スタッフ

柳井 隆道

Option合同会社
代表社員
マーケティングテクノロジスト
marketechlabo

東京大学を卒業後、webマーケティングやサービス企画、システム開発などに従事。
デジタルマーケティングの世界に落ち着き、事業会社、広告代理店を経て2014年に独立。
現在は大小さまざまの事業会社、広告代理店などに対して、テクノロジー観点からデジタルマーケティングの支援を行っている。データ計測の設計、実装から分析、マーケティングオートメーションや広告運用などの施策との連携まで扱う。
さまざまな規模の経験から、企業の身の丈にあったデジタルマーケティングの企画に強い。フリーランスで活動していたが、2017年から法人化。

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