コラムバックナンバー

Webサイトの機能的な課題や主要なUIの改善にひととおり手を付けていると、改善成長に鈍化が見られることがあります。「主要な課題には何かしらの対処をしA/Bテストも重ねてきた、まだ改善の余地は多くあるはずだが、大きな改善結果に繋がらなくなってきた……」など、要因は他にもあるはずですが、機能的な主要な改善が一巡した状況かもしれません。

そういう局面を迎えたら、ユーザーのWhyを探す旅に出てみると良いです。従来とは異なる切り口の打開策につなげられます。「ユーザーがなぜその行動に至ったのか」は、合計や平均の数字には表れません。特徴的で一意なユーザーをピックアップし、動機や意図、習慣、迷いを推測、ユーザー行動と共にプロットして、そこからヒントを得ていこうというものです。顧客理解の一環です。

「ある1ユーザーの行動」として気付きを拾い、平均には薄めず合計にも丸めません。実店舗ビジネスにおける「現場でのユーザー観察」に近いでしょうか。

■特徴的なユーザーをピックアップ、属性でセグメント分類

まず、特徴的なユーザーをピックアップします。Googleアナリティクスを利用していれば、「ユーザーエクスプローラ」のレポートが活用できます。

・より多くのページ閲覧やアクションをしているユーザー
・頻繁に訪問しているユーザー
・まだ数回目の訪問だが、一定量の閲覧やアクションをしているユーザー

このような、特徴的な動きのユーザーをピックアップします。直帰したユーザーの行動心理は漠然としか推測できませんが、多くの行動を残した高い熱量のユーザー行動からは背景を具体的に推測できます。想定しているユーザーシナリオがあれば、重要なステップを軸にしてピックアップすると良いです。

ユーザーに何らかの属性があればセグメント分類ができます。会員属性、過去の購入履歴やコンバージョン履歴、普段の接点チャネルといったものです。その属性を元に、ユーザーが常連層なのか一般的な既存顧客なのか、何度か接点を持つ潜在顧客層なのか初期の顧客層なのかが判別できると、ユーザー行動の意味も変わってきます。

■熱量のあるユーザーが一定数いる可能性を見いだし、改善から一歩前に進んだ「施策」へ

顧客理解の一環ですから、時間のかかる取り組みです。短期間で大量のユーザーに対してできる分析でもありません。時間を見つけて1週間に数人ずつ取り組んでいくことになるでしょうか。

・どんな情報を求めているのか、背景にはどのようなものが考えられるか(→需要や訴求の発見)
・予期しないページ遷移があるか、なぜその行動に至ったのか(→新たなユーザー行動の発見)
・迷っていないか、情報に適切にたどり着いているか、情報は足りているか(→コンテンツの課題、UXの課題)

上記のような点に着目して、ユーザー行動にメモを残していきます。このような個のユーザー分析を進めていくと、「こういうシチュエーションでの需要は一定数あるのでは」「ここに困っているユーザーは多いのでは」「この行動は実は習慣化しているのでは」「重要と捉えていなかった要素が実は鍵を握るのでは」という仮説が挙がってきます。

仮説は、最初は「n=1」でも構いません。その仮説を積み上げていくと、仮説のnは2になり3になり、熱量のあるユーザーが一定数いる可能性を帯びてきます。そうすると、従来の改善活動とは異なる切り口でのテストマーケティングや施策を、検討できるようになります。それは平均的な課題の解決ではなく、新たなアプローチなはずです。

2018年に開催したセミナーでも、1ユーザー単位での定性的な行動分析の話が、リクルートライフスタイルやIDOM(ガリバー)からありました。全体の数字からは判断しにくい部分を定性データからの推測で補い、施策につなげていくという印象的な話でした。
【活動報告】セミナー「BtoC界の巨人に学べ!モバイル時代の定量 / 定性分析を用いたサービス改善手法」(2018/6/14) 

もちろん、デジタルな行動データだけではユーザーの実際の動機や意図、心理変化などはわかりません。そこは別途、インタビュー調査やヒアリングなどを行って根拠を肉付けしていきます。

合計や平均といった数字からの改善は、最大公約数的な視点です。もう少し踏み込んだ顧客理解で、改善から一歩前に進んだ「施策」を打つことができれば、より熱量のある顧客を増やせる可能性を秘めています。そのような取り組みを増やしていきたいです。

コラム担当スタッフ

いちしま 泰樹

株式会社真摯
代表取締役
真摯のブログ
makitani.com

外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。

マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。

著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。

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