活動報告

開催日時 2018/06/14(木)
会場 東京 市ヶ谷

2018年6月14日に、「BtoC界の巨人に学べ!モバイル時代の定量 / 定性分析を用いたサービス改善手法」が開催されました。今回のセミナーは株式会社ナンバー 渋谷 泰一郎氏が企画しました。セミナーの企画から当日の司会運営まで実施しています。
今回は二部構成です。
第一部はリクルートライフスタイルの前田氏・奥山氏から 、美容室予約の「ホットペッパービューティー」などの運営によるカスタマーのビッグデータを活用したアナリティクスの実践事例の紹介です。
第二部は株式会社IDOM中澤 伸也 氏より、中古車の買取・販売「ガリバー」におけるモバイル中心のユーザコミュニケーション設計とPDCA手法の紹介です。
会場は満席で、セミナーへの関心度の高さが窺えます。

レポート執筆:菊原 晋作(菊原web解析事務所

第一部:リクルートのtoC向け事例から学ぶモバイル活用 
~アナリティクス実践からアンチパターンまで~


株式会社リクルートライフスタイル 前田 周輝 氏


株式会社リクルートライフスタイル 奥山 晃次 氏

冒頭では奥山氏よりリクルートのビジネスについての説明がありました。それはクライアントとユーザを結びつけ、その対価としてクライアントからフィーを貰うモデルです。その中で講師が所属するリクルートライフスタイル社の主なサービスサイトが「じゃらん」「ホットペッパーグルメ」「ホットペッパービューティー」になります。今回のセミナーは、この3サイトでの事例紹介です。
また、リクルートライフスタイルのアクセス解析の歴史について説明があり、Tableauの導入が2012年、GCP/Firebaseの導入が2017年と、新しいテクノロジーを積極的に導入する姿勢を強く感じました。

ここでスピーカーを前田氏にバトンタッチし、toC向け事例から学ぶモバイル活用について説明がありました。まず、「なぜモバイルがテーマか」という本セミナーにおける重要な問いかけがあります。

その答えがMicro-Momentsです。

「人々が何かを欲した瞬間に行う、モバイルデバイスでの検索行動」を、GoogleがMicro-Momentsと名づけ重要性を説いています。それは近年の技術進化に伴い大多数の人がガラケーからスマホを持つようになり、結果、ウェブアクセスの行動変化が起こったことです。手元にスマホがある事で、いつどこにいても、欲求という感情が起こったときに「検討」を行うことが出来るようになり、その回数が大きく増加したという説明でした。この技術進化による行動変化を、前田氏は「機会であり脅威」と言います。
脅威は、検討が増えることは、競合サービスの比較を行うこと。競合サービスが多い中でどうやって自社サービスをユーザに認識してもらうか、は皆が持つテーマでしょう。
機会は、検討というユーザ行動をチャンスと捉えモバイルの技術進化を利用しコミュニケーション設計を行っているという内容でした。
モバイルの技術進化では以下が挙げられました。

  • ネイティブアプリ
  • プッシュ通知
  • 位置情報/ジオフェンス/センサー
  • カメラ
  • 音声
  • バッテリー
  • Etc.

この中でプッシュ通知の活用事例についての説明がありました。検討段階にいるユーザに対して、プッシュ通知を利用しコミュニケーション設計を行なっています。たとえば「じゃらん」であれば、朝に宿Bのコンテンツを見て離脱したユーザに対して、閲覧履歴に基づくレコメンドでおもてなしします。それを機械学習させると言い、まさに1to1マーケティングの1手法だと感じました。
また、「ホットペッパー」の事例では店舗予約ページでセッションが切れた(離脱)したユーザに対しては、店舗一覧のレコメンドをアプリプッシュで通知するという施策を実施することでKPIが大きく上がったとの内容でした。本セミナーを通して重要な点としては、セッションをという「点」をユーザという串で刺すことで、断続的になっている「点」を束ねて「線」で見る事ができます。束ねる事で、離脱時に見ていた内容に関連するコンテンツをプッシュ通知でユーザにアプローチが出来る。Micro-Moments時代をチャンスと捉えて、KPI達成に向けて利用しているという結論でした。

次に分析のプロセスについてです。
まず「じゃらん」での行動分析について説明がありました。CVRを上げるためにはPDCAを高速で回す必要があり、PDCAを高速で回すためには、改善施策(ネタ)が必要になります。改善施策を見つけるには、1ユーザの行動分析が必要不可欠と前田氏は語っていました。その方法として、解析ツールデータから1ユーザ単位で行動分析を行い、ページ回遊や離脱ポイントを見ながら施策を考えます。
前田氏は月に200人の行動分析をTableauでチェックし施策を検討しているそうです。テクノロジーの進化でユーザレベルでの計測が可能になった現在、想像ではなく実際に個別のユーザー行動を見るべきと言います。また、高速PDCAを回す上では、施策に合わせて柔軟にKPIを定義することも重要な点と述べます。

ABテストもセッションレベルとユーザレベルでは結果が異なる事も、という内容や、AAテスト、同一デザインで表示速度をコントロールする、表示速度の改善がいかに重要かということの説明もありました。最後に、ABテストは負けが続く事も多くあり、そういう時ほど明るい気持ちを持つという精神面の重要性について語りました。
その後、再度奥山氏が登壇し「属人化のリスクと組織について」について説明しました。

専門的知識を必要とするポジションの人間が突然離職した場合、今までのナレッジ、各種ツールの設定状況などが全てブラックボックスになってしまう。高速にPDCAを回しても、短期的では意味がなく中長期で成長出来る組織作りが必要との事でした。中長期で成長する仕組み作りには、ビジネスサイドとアナリティクス統括部門の連携が非常に大事と言い、連携が出来ていないと、限りある変数(propやeVar)に過去と同様のものを設定してしまうこともあったと言います。
脱俗人化の対策としては、Adobe Analyticsの実装や操作方法を全てウィキ化する。優秀なアナリストの分析手法もオープンにするとの事です。

最後に

  • 複数メディアを持つリクルートだから出来る事で、じゃらん、ホットペッパーグルメ、ホットペッパービューティーなどを横断して共通IDを持たせた。
  • 今はMicro-Momentsによって発生した欲求に対してアプローチをしてるが、欲求自体を喚起させる施策を考えたいという展望も語られました。

第二部:モバイル時代のコミュニケーション設計とPDCA手法


株式会社IDOM 中澤 伸也 氏

第二部は、中古車の買取・販売「ガリバー」におけるモバイル中心のユーザコミュニケーション設計とPDCA手法の紹介です。

まず、IDOM(ガリバー)のデバイス状況の説明がありました。
スマホのユーザ比率は7割と圧倒的に多いが、スマホのセッションタイムはPCの6割程度。しかしスマホのセッション頻度は増加しています。これは、ユーザのスマホシフトの環境変化により、セッションが細切れになり、高頻度接触になった結果です。
デザイン観点ではモバイルならではの制約もあるので注意が必要とのこと。それは、モバイルでは縦長の1画面情報量となり、PCと比較するとクリエイティブの自由度は低くなるという点です。
IDOMのサービス(中古車買取販売)の場合、一般的なECサイトと違い、中古車販売のため、15年に1度くらいしかユーザがこないモデルです。そのため、新規ユーザをLINEやメール、アプリにいかに早く持ち込みリードを取得するかが非常に重要です。

また、業界全体の成熟にともない、集客の最大化が難しくなった今、重要なテーマとして取り組んでいる施策が、コンテンツマーケ+チャットです。
どのようなチャットコミュニケーションをしているかというと、まず顧客のカテゴライズ・セグメントです。そしてそれに沿ったシナリオ設計をします。チャットは会話の85%がルール化されており、そのメリットはチャット対応のABテストが出来ることです。

また、現在のチャットの限界についても説明がありました。それは、ボット対応についてです。チャットの役割は絞り込みではなく、広げる提案をしなければいけません。中古車販売のビジネスモデルは、いわゆるユーザの質問から結果を絞り込む事は得意ですが、提案を広げること、セールスコミュニケーションは不得意のようです。言葉の裏にある心理や、言葉のニュアンスを機械に認識させるのは難しいのが現状とのことでした。
PDCAをまわす中でのKPI設計についての話もありました。KPIの選定がとても難しく、目先のKPIばかりを追っていると最も重要なKGIが下がることもあったそうです。なので、複数のKPIを見ながらシナリオ設計・運用を行うことが重要です。
施策出しについてもリクルートライフスタイルと同様の事が語られました。施策は全体のデータを見ても出ない。個別のユーザ体験(データ)から良い施策が出るという事です。そのための手段としてユーザグラム、FullStoryというツールを推奨していました。
IDOMが実際に使っている施策を出すための分析手法も公開されました。
それは「右目左目分析」です。左側(左目)でデータを見て、右側(右目)でスマホでのユーザ行動録画ツールを使い、1ユーザのサイトの使い方を見ながら施策を考えるというものです。

中澤氏は、データだけではわからない事もたくさんあると言います。定量的なデータにプラスして、定性的なユーザ行動を掛け合せることで良い「気付き」が得られるという内容でした。ユーザ行動録画ツールではチャット利用状況も録画して見られます。ここで得られる気付きとしては、チャットを離脱するタイミングや誤字などで、コミュニケーション改善に役立てているとの事でした。

まとめ

BtoC界の巨人に学ぶというセミナーでしたが、期せずして2つの巨人とも「ユーザーひとりひとりの動きを細かく追っていく」という共通の答えにたどり着いていたのが印象的でした。
巨人が持つデータは膨大です。そのデジタルマーケティングも、当然膨大なデータをかしこい仕組みで分析していくのだと思っていましたが、結局は店員さんがお客様から学んでいくように、BtoCのCの一つ一つの粒に、その答えを見つけていくのだ、と妙に感動してしまいました。

出演講師

奥山 晃次

株式会社リクルートライフスタイル
アクセス解析チームリーダー

詳細プロフィールを見る

中澤 伸也

株式会社IDOM
デジタルマーケティングセクション セクションリーダー

詳細プロフィールを見る

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