コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2019年1月23日号より
インターネットでは、文化も地域も年齢も性別も関係なく、言葉を中心にコミュニケーションがとれる。もちろん写真や動画やアニメーションといった言葉に依存しないコミュニケーションも使うけれど、かつては前提となる文脈や価値観の共有は限られていたから、どちらかと言えば最初はローコンテクスト(前提となる文脈が少なく言語に依存してコミュニケーションが行われること)な世界だったと思う。
そこから通信技術やモバイルデバイスが発達して、生活にもインターネットが広く深く入り込んできた。
コミュニティも生まれ、そこはかとなく、場ごとに文化や価値観を帯びるようになってきた。
いまは少しずつハイコンテクスト(コミュニケーションの際に前提となる文脈が近く、以心伝心で通じてしまう状態のこと)なコミュニティが、生活と境目がなくなり始めたインターネットの世界に生まれている状態だと思う。もちろん、インターネット黎明期にもそういうコミュニティはあっただろうけれども。
ハイコンテクストなコミュニティでは、その場を理解した取り組みがより求められる。「コミュニティ」としたけれど、結局はサイトやメディアやブランドだ。
ローコンテクストにおけるWeb施策やサイトの改善は、アナリティクスとの距離は近く、改善も進めやすく、良い結果も比較的出やすい。レイアウトや構成や表現を変えれば数字は変化しやすく、メリットをきちんと伝えられれば数字は良くなった。
ハイコンテクストなコミュニティでは、以前なら結果も出やすかったローコンテクストな取り組みを行っても、思うような結果につながらなかったりする。一つ一つは良くなっているように見えるけれども、俯瞰して見れば足踏みをしていたりする。
文化や価値観を帯びたものを動かすというのは難しい。加えて、ローコンテクストな取り組みが一瞬で場を悪化させることもある。慎重さも必要だ。
どちらかと言えばローコンテクストだったインターネットの世界では、10年前には改善のセオリーのようなものが少しはあったかもしれない。ちょっとしたティップスやテクニックで、30点を60点にするのは容易だったかもしれない。そして、70点を80点以上にするのは昔も難しかったけれども、いまはもっと複雑でややこしくて難しい。
私たちは、すぐに反応するようになったし、
一方ですぐに飽きたり忘れたりするようになった。
目新しさや刺激やスピードや映えをより求めるようになった。
そして、すぐに数字やデータで見られるようになったし、
すぐに何かと比較するようになったし、
すぐに答えを知りたがるようになった。
思考や行動の単位はどんどん小さな点になり、後からいろんな組み合わせて繋ぐようになった。
世界は複雑でややこしくなり、思考や行動は小さな点の集合になり、数字やグラフの向こう側の文化や価値観をより理解しなければ、取り組みがうまくいかなくなり始めている。
一方で、私たちは答えや結果をすぐに求めてしまう。それはもう仕方がない。
私はやや苦悩している。10年前とは取り組み方は変化し、期待する結果もすぐには出なくなってきた。業務としてさまざまなコンテクストと対峙することになり、考えたり把握したりする範囲が広くなってきた。取り組みも重く複雑になってきた。
新しい世代は、複雑でややこしいこの世界をうまく渡り歩けるようになるかも知れないし、すでにそうかもしれない。少なくとも私よりはきっと上手だ。
できることはなんだろう。文脈や価値観を理解するために、もっと現場に出ていこう。そのコミュニティの人たちの行動の現場をもっと理解しよう。あわよくば当事者になろう。あらゆるコンテクストの理解は不可能だけれども、対峙することになったコンテクストはより数字の向こう側に向き合おう。
そんな2019年の最初の担当コラム。どうぞよろしくお願いいたします。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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