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疑問を抱くことは、仮説を立てることよりもむずかしいと感じます。特に、普段気にしていないことや習慣化してしまったものに対して、「なぜそうなのだろう」と思う外部刺激がほとんどないからです。

ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏は、受賞の記者会見で「好奇心を持ち続けること、そして簡単に信じないこと」とおっしゃっていて、「疑問を抱くこと」が報道でもフォーカスされました。また、毎回楽しみにしているNHKのバラエティ番組『チコちゃんに叱られる!』も、日常の素朴かつ当たり前すぎて答えられない疑問が、番組の柱です。

普段のプロジェクトや業務でも、疑問が抱かれないために、そのまま維持されたり放置されたりしていることが多くあります。

  • 普段ほとんど変化のない指標、KPI
  • 普段気にかけていない指標
  • 議題に挙がったことのないダッシュボードやレポートの項目
  • 前任から代々引き継がれ続けているレポートや作業

何か変化があったり明確な課題を抱えていたりすれば、その事象に対してトヨタ式「なぜなぜ5回」のように疑問を抱き、仮説を考えることはむずかしいことではありません。むずかしいのは、ルーティンや定例になったもの、変化のないもの、普段気に留めないものへの疑問でしょう。ルーティンや定例化されたものは実行のタイミングが訪れるので、「これって何のためにやっているんだっけ? 必要なんだっけ?」と振り返る機会があります。一方、普段気に留めないものへの疑問はそういったタイミングがなく、よりむずかしそうです。

仮説立てと疑問は「鶏が先か卵が先か」のケースもありそうです。「普段気に留めていなかった○○機能の利用率に着目し、そこから仮説と施策を繰り返してユーザーアクションの改善につなげられた」、というケースは起こりうるでしょう。抱えている多くの課題を解決する糸口を普段からうっすらと考え続けていると(これは常に仮説を考え続けている状態ですね)、仮説として普段抱くことのなかった事項に着目できた、ということかもしれません。

どうすれば、疑問を抱かれるべき事象に対して、私たちは疑問を抱く「きっかけ」を作れるでしょうか。

  • 新たにチームに加わったメンバーの意見を重用する(新たな視点)
  • 引き継ぎのタイミング、期や四半期といった区切りでルーティンを見直す(事項の整理)
  • 抱えている課題の解決方法を普段からうっすらと考え続ける(普段の思考)

3つ考えてみました。「5歳の素朴な疑問や発想」がまずは鍵を握りそうですので、新たなチームメンバーのフレッシュな視点は重要でしょう。先日、大学生と話をする機会がありましたが、経験や思考回路が大きく異なる人たちの言葉には驚きやヒントがとても多いです。加えて、定期的な習慣事項の整理、そして普段から考え続けることを挙げてみました。

習慣化されたものを疑いつつ、課題解決思考を習慣化させるという、やや逆説的で矛盾をはらんだ案になり美しくありませんが、普段の改善サイクルで大きな成果につながっていないのであれば、普段気にかけていないところに課題が潜んでいるからかもしれません。疑問を抱くことにもう少し自分の中でもフォーカスを当ててみようと思います。

コラム担当スタッフ

いちしま 泰樹

株式会社真摯
代表取締役
真摯のブログ

外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。

マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。

著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。

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