コラムバックナンバー
Option合同会社 柳井 隆道
発信元:メールマガジン2018年7月4日号より
このコラムでもどうしてもアナリティクスのアウトプットの質が多く議論されがちですが、今回はアナリティクス業務自体の効率化について述べてみることにします。
■アナリティクス業務の自動化
「働き方改革」が叫ばれてしばらく経ちますが、実際にデジタルマーケティングの世界でも広告代理店を中心に労働時間の短縮が進められています。
従来ウェブ、デジタルの世界は労働時間が長いと言われていました。どうしてもデジタルの業務は単純作業が多いのです。
広告運用ではレポート取得や入稿、場合によってはExcelで単純集計して入札を行うなどの作業。アナリティクス業務においても同様で、さまざまな計測ツールからCSVファイルをダウンロードし、Excelでまとめるなどというのが業務時間の多くを占めているのではないでしょうか。
やっていたらわかると思いますが、これらはみなタスクのルールさえ決めれば誰でも回せる単純作業です。
そのような現場に対して労働時間を短縮する必要が出てきたわけで、単純作業を人間ではなく機械にやらせるRPA(Robotic Process Automation)が今話題になっています。その名の通りロボットを使った業務の自動化です。
自動化によるデジタルマーケティング業務の最適化が議論されるようになったのです。
今年のIT業界ではAIとRPAが2大トピックとして話題になっています。AIについてはこの読者で興味のない方はいないでしょう。ところが実際に身近なのはRPAだったりします。
RPAという言葉がバズワード化しているところに懸念もありますが、RPAに限らず、データをAPIで取得する、データベース連携するなど、人間の作業をコンピュータの力で行うところがデジタルマーケティング業務最適化の主眼です。
データ取得はRPA導入の対象となる最も典型的な仕事であり、かつアナリティクスに携わる人たちの労働時間の多くを占める仕事でもあります。
広告代理店を中心に働き方改革を迫られ、そのためにRPAの導入を進める会社もある。その結果デジタルマーケティング業界の業務自体が効率化されている過渡期なのかなという気がします。
■正しい手抜き
もともとアナリティクスの世界の人たちは大量の作業を気合と根性で乗り切る発想の人たちが多かったわけです。
そして少しでもアウトプットの精度を上げるために、気合と根性でさらに時間をかける。
逆に私のようなエンジニアリングのバックグラウンドがある人間は逆に面倒な単純作業が大嫌いでして、いかにしてそれを自動化できないかと常に考えてきました。自動化するというのはコンピュータに命令するためのロジックを考えることです。
運用型広告とアナリティクス業務が似ている点として、「積極的に正しい手抜きをしなさい」ということが言えるところがあります。
間違った手抜きをするとアウトプットの精度が落ちますが、ポイントを押さえた手抜き(重要でないところを軽視する)をするとアウトプットの精度を大きく下げずに時間効率を上げることができるわけです。
たとえば現状100の実績をあげているプロジェクトがあって、それを20時間かけて110の成果にできる仕事があったとします。
正しく手を抜いて10時間かけて108にする。残りの10時間で違うプロジェクトの仕事をやって+5の成果を出せば、トータルでは13の成果を生んだことになるのです。
この意識が重要です。働き方改革というのは単に労働時間を短くすればいいというのではなく、こういった考え方、業務自体の効率化、取り組み方もセットになったものです。
アウトプットの質を維持しつつ、処理にかかる時間を短縮する。つまり正しく手抜きをするということなのです。
それを踏まえて業務上、楽をする方法はないか、そういった観点で情報収集することも大切です。アナリティクスに携わる方々も、アナリティクスそのものだけではなく、業務を改善するテクノロジーに興味をもって情報収集してみることをお勧めします。
東京大学を卒業後、webマーケティングやサービス企画、システム開発などに従事。
デジタルマーケティングの世界に落ち着き、事業会社、広告代理店を経て2014年に独立。
現在は大小さまざまの事業会社、広告代理店などに対して、テクノロジー観点からデジタルマーケティングの支援を行っている。データ計測の設計、実装から分析、マーケティングオートメーションや広告運用などの施策との連携まで扱う。
さまざまな規模の経験から、企業の身の丈にあったデジタルマーケティングの企画に強い。フリーランスで活動していたが、2017年から法人化。
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