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仕事の考え事をしていると、一見関係のない昔の出来事をふと思い出して、線でうっすらつながることがあります。今日は、KPI設計の際の「重要な集団」の発見と、居酒屋でアルバイトしていたときのお話。

私は大学生のとき、金沢の郷土料理を扱う居酒屋で調理のアルバイトをしていました。板長には、たわいない話を含めてお世話になったのですが、その日の売上状況や最近の繁盛具合を、板長はメニューの中の「刺身盛り合わせ」の注文数で感じ取っていました。「今日は刺身盛りがよう出てるから、売上大台に乗ったんちゃうか」「ここ最近、刺身盛りの出がいまひとつで、あかんなあ」という感じです。

金沢の郷土料理のお店ですので、実は「刺身盛り合わせ」はオススメの定番メニューではありません。郷土色のあるメニューは他に数多くある中で、「刺身盛り合わせ」はよくある標準的でオーソドックスすぎるメニューでした。とはいえ、安定して一定数の注文をいただく「陰の主役」的存在だったのでしょう。板長は、経験から「刺身盛り合わせ」が鍵を握ると発見し、仕込みや発注への反映だけではなく、繁盛具合や景気を見ていたのだと思います。

このような、企業やサービス特有の「重要な集団」「パラメータ」をいかに見つけるかは、なかなかむずかしいものです。しかし、その発見が、KPI設計やその運用の鍵を握るとも感じます。

KPI設計は、ゴールを指標やプロセスで因数分解していくなど、ロジカルに組み立てていくことが多いです。そこに、現場ならではの経験や業界の知見を含ませて、よりふさわしいKPIを抽出していくのですが、よく見るような指標の因数分解に終始するほど、運用の際にしっくりきません。因数分解した指標やプロセスを、「どういったユーザーに対して」「どういった商品に対して」「どういったアクションに対して」などとフォーカスを当てないと、輪郭がはっきりしないためです。

・特定の属性のユーザー、会員
・特定カテゴリーの商品、サービス
・特定の行動

このような企業やサービス特有の「鍵を握るクラスタ(集団)」を発見したりカテゴリー分類したり、定義したりすることが重要です。

「ファン」はどういう人たちなのか。「利用促進を誘発する商品」はどれか。「初期ユーザーが安定ユーザーに転換するきっかけのアクション」をどう定義するか。それらに対しての、重要な指標はどれか。

これらはどれも「仮説」で、ある程度固まるまでに試行錯誤が必要な要素です。環境の変化に伴って見直しも定期的に必要だったりします。

むずかしいですね。でも、KPI設計には必要な要素です。

インハウスでの取り組みであっても支援する立場であっても、現場にお邪魔したりヒアリングを重ねたりして、試行錯誤して発見、洗練、研磨していくものになるでしょう。板長のように、必ずしもロジカルではなくて「肌感覚」で探し出す方が良いのかもしれません。

コラム担当スタッフ

いちしま泰樹

いちしま 泰樹

株式会社真摯
代表取締役
真摯のブログ

外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。

マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。

著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。

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