コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
メールマガジン2017年8月2日号より 真摯 いちしま泰樹
KPI設計では、「先行指標」として使える指標を作れるかどうかで、命運が分かれるのでは、というお話。
先行指標は、少し先の将来の業績を見通せる指標のこと。おそらく景気や経済の領域でより用いられるものだと思いますので、ウェブが関与するビジネスのKPIではあまり耳にしない印象です。書籍『データ・ドリブン・マーケティング』の中で、キャンペーンの目的に応じた測定指標の類型について書かれたくだりがあります。そこでは、指標の大まかな類型は戦略的なもの、戦術的なもの、運用上のものの3種類に分類でき、先行指標として使える指標は戦略的なものであるとしています。
例として挙がっている指標は、LTV、顧客満足度、ブランド認知率などです。容易に算出しにくいビジネスや企業もあると思いますが、要は「どれだけ支持されているか」の指標で、それをどの顧客層まで対象を広げるかだと思います。
ウェブサービスであればアクティブユーザー、メディアであれば常連層のそれぞれのボリュームや割合でもよいでしょうし、ECであれば年間LTVに加えて優良顧客数もよいでしょう。自社内にすでにある数字で算出したり、調査を行ったりして、定義していくことになります。
先行指標は将来の業績を少し約束してくれるので、その基盤の上に新しいプロジェクトを乗せられたりします。メンバーが少ないスタートアップなど非連続な成長を狙うところは、細かなKPI管理をせずに、先行指標といくつかの戦術的な指標のみで回してもよいのでしょう。
書籍では、戦術的な指標として売上やリード、コンバージョン数、運用上の指標としてコンバージョン率や顧客獲得単価、コストなどを挙げています(少し意訳しています)。
ところで、例えばコンバージョン率は先行指標になり得るでしょうか? 運用上の指標は、再現性の維持と改善の努力に加え、技量ノウハウの向上を経て、連続的な成長が見えてくるものです。漠然とした「全体のコンバージョン率」は先行指標にはならないですが、もし太い安定した特定トラフィックがあり、そのコンバージョン率を確実に維持向上できているのであれば、そのセグメントのコンバージョン率は先行指標になり得るかもしれません。
KPI設計で数多くの指標を挙げて網羅的に把握しても、将来の業績が見通せるわけではありません。先行指標はつまるところKGIやKSFの位置にある指標のはずですが、自社にとっての先行指標は何が妥当か、改めて考えてみるとよいでしょう。
マーク・ジェフリー著『データ・ドリブン・マーケティング』
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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