コラムバックナンバー

前回のコラムでは「分析者の即戦力が採用できないときに行うべきこと」として、人材育成とポテンシャル採用(そして育成)を挙げ、自社のデータを提供してのワークショップ開催を提言しました。

その際に重要なポイントとして、下記の3点を挙げました。

– お客様用の演習用データのみで行わないこと
– 分析ソフトウェアの操作説明にならないこと
– 分析の実践はグループワークで行うこと

今回はこの3点について詳細をお話ししたいと思います。【お客様用の演習用データのみで行わない】
集計やデータ分析を学ぶ際、はじめは演習用のデータとして集計のイメージがしやすい/分析の結果差異が見出しやすいデータを用意して学ぶことは多くあります。演習用のデータや各種統計調査の機関が公開しているデータには身近に感じられるテーマも多くありますので、それを活用することはもちろん有用です。
ただし、こういったデータではビジネスでの分析実務において直面する課題とは異なる課題であることが多く、実務ではどうなのか?ということをイメージしにくくなってしまいます。
そこで、基本的な概念や差異の見出し方は演習用データ、実務で用いるデータを用いて実践、と使い分けられれば、それを防ぐことができます。特にデータ容量の課題は演習用と実務用では乖離があることがほとんどであると思います。また、自社で保持しているデータを用いる場合は、ある程度のマスキングや加工は不可欠ですが、その場合も出来る限り実際のビジネスに近い状態で提供するほうが参加者に採用後の実務イメージをしていただきやすくなります。

【分析のソフトウェアの操作説明にならないこと】
分析の実践講座を行う際にありがちなのが、はじめの何割かの時間をソフトウェアやツールの設定にとられてしまうということです。事前に推奨の利用環境や必須のソフトウェアを告知しておけば良いのですが、ここはある程度は仕方ありません(告知しても準備しないで臨む方もいらっしゃるため)。もしそういう方がいらっしゃる場合も、後述のグループワークでワークショップを進めることで、ある程度は解消できます。
さて、準備が終われば次はデータの処理や特定の分析手法実行方法のレクチャーになりますが、このときもデータのインポートやアウトプットの確認方法などの説明に終始しないよう注意が必要です。重要なのは分析のアウトプットからどのように解釈し、意思決定するかということです。その判断方法を学ぶことが一番の価値であるということを一貫して伝えられるよう工夫できると良いと思います。

【分析の実践はグループワークで行うこと】
ビジネスのほとんどは1人では完結しません。分析の仕事も様々なステークホルダーが存在し、それぞれの要望を満たすことが求められます。データ分析のプロジェクトも、ビジネスの課題を整理する力、データを解析する力、大量データを処理する力、ソリューションとして組み込む力、依頼元に誤解なく伝える力など様々な力が必要です。実際のビジネスの現場では「自分では行えないが、出来る人を見つけてくる」「解決できる人を探す」といった能力が求められることもあるでしょう。
全ての能力を備えている人は世の中にほとんど存在しません。分析の実践をグループワークで行うことは、実務に近い形でスキル・能力を補完しあえるだけでなく、必要なコミュニケーションや解決策の探し方など、様々な面で実際のビジネスに近い形で学ぶことができます。また、グループごとにどのようなアプローチをとったかを共有することで、参加者の方々がさらに多くの知見を獲得することもできます。

即戦力となる分析者の採用は多くの企業にとって大きな課題であると思います。即戦力の採用に力を入れつつも、上記の3点をおさえたワークショップの開催は育成・採用につながるだけでなく、企業で教える側を担当する実務者の成長の機会にもなります。ぜひ、実践につなげていただければと思います。

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コラム担当スタッフ

菅 由紀子

株式会社Rejoui
代表取締役

株式会社サイバーエージェント、株式会社ALBERTを経て、2016年に株式会社Rejouiを設立。DX推進支援、データ分析・利活用コンサルティング、データサイエンス教育事業などを展開。
統計ソフトRやPythonを活用した分析入門講座をはじめ、学生、企業、官公庁へ向けた統計・データサイエンス学習講座を提供。日本行動計量学会、WiDS TOKYO @ YCU、日本RNAi研究会等、数々の学会およびシンポジウムに登壇。自身がアンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価を受け、2021年度日本統計学会統計教育賞受賞。

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