コラムバックナンバー

株式会社ナンバーの渋谷と申します。アナリティクスアソシエーションの運営を担当しており、今回のメルマガを担当いたします。
先日a2iのミニコンテンツ「ひとこと茸」にて「ダッシュボードは結局見なくなる」というお題を実施しました。

エキスパートの皆さんからいただいた回答はどれも興味深く、私自身も普段業務でダッシュボードを作る立場として、改めて向き合ってみようと思い、本稿の主題にしました。

構成ですが、はじめに2つのキークエスチョンを提示します。
そのうえで、私たちが「定期的にやろうと思って始めたものの途中でやめてしまったもの」また「日常の中で定期的に行っていること」を紐解き、人が「定期的に行う」について理解を深めることでキークエスチョンへのアンサーを探っていこうという試みです。

前提

本稿は必ずしも「ダッシュボードを作って定期的に見ましょう」という主張ではありません。ダッシュボードなど作らずともビジネスがうまくいけばまったく問題ないと思っています。
ただ、何らかの目的があって作成されたダッシュボードが結局見られなくなるのはよろしくないので、より良いダッシュボード活用を考えていきたい、といった趣旨です。

結論

先に結論を2行で。

人間は基本的にダッシュボードを見なくなる生き物である。
だが、ダッシュボードによる「継続的な価値提供」が行われ、「定期的に見る仕組み」があれば、その限りではない。

キークエスチョン

2つのキークエスチョンから始めます。
(1)「ダッシュボードに費やす時間」に価値はあるか?
(2)ダッシュボードを見る見ないはモチベーションに左右されていないか?

ヒントを求めて

▽「定期的にやろうと思って始めたものの途中でやめてしまったもの」について。
英語の学習やダイエットなど、今回こそは!と決意を新たに始めたものの結局続かず挫折してしまうことは誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。私は星の数ほどあります。

英語が話せるようになりたい、夏までに腹筋を割りたい、といった「状態ゴール」は明確ですが、ゴールに到達し、その先にある果実を得るには、日々の積み重ねが必要です。
これら「日々の積み重ね」は自分との約束の上に成り立つわけですが、人間は弱い生き物なので、その約束を破ってしまいがちです。

ただ、「自分との約束は破ってしまうが、他人との約束は破らない、あるいは破りにくい」という人も多く、そこをビジネスにした代表例がライザップです。
食事や運動をトレーナーと約束し、日々”報連相”を行うことで、自分との約束ではなく、他人との約束をもって「日々の積み重ね」を実行していきます。
食事やトレーニングを行っているのは自分自身であって、ライザップの提供している価値はあくまで「誰かと一緒に」の部分です。

この「誰かと一緒に」はヒントになりそうです。

▽「日常の中で定期的に行っていること」について。
皆さんが日常生活で定期的に行っていることには何がありますか?「ルーティン」や「週◯回」といって思い浮かぶものです。

例えば、歯磨き、通勤、食品や日用品の買い物、植物の手入れ、飼っている動物のお世話、といったものが挙げられます。これらはサボると負の結果が返ってくるため、サボりにくく、習慣化する類のものです。やらないとマイナスなものです。
一方、英語の学習を行う、ジムに通うといった行為はサボると会費等お金の無駄にはなってしまいますが、すぐ何か負の結果が返ってくるわけではないので、サボりやすく、習慣化が難しい類のものです。やってプラスなものです。

後者は習慣化が難しいですが、先ほど出た「外圧(ライザップなど)で習慣化する」方法以外にも、前者のように既に習慣化しているものにくっつけるといった方法が挙げられます。
例えば歯磨きをしながらつま先立ちを30回行う、通勤時にエスカレーターはNGとしてすべて階段にする、一駅手前で降りて歩く、よく行くスーパーや薬局の導線上にあるジムあるいは公園でトレーニングを行う、など。

この「既に習慣化しているものにくっつける」はヒントになりそうです。

キークエスチョンへのアンサー

(1)「ダッシュボードに費やす時間」に価値はあるか?
このクエスチョンを1つ目にしたのは、このクエスチョンの答えが「イエス」であり、かつ具体的にその価値について答えられなければ、見る見ない以前の話だからです。存在意義から見直す必要があるでしょう。

もとい、そのダッシュボードは誰にどんな価値をもたらしているのか。また、誰にどんな価値をもたらすように作られたのか。設計段階で作る人と見る人が膝を突き合わせて価値を定義しておくことが重要です。
例えば、マネージャーが現場のメンバーに聞かなくても、あるいは、複数のExcelファイルを開かなくても先週の主要指標がパッと確認できる、であったり、施策担当者が先週実施した施策の効果を複数のデータソースからのデータを元に評価分析して次に繋げられる、など、「誰に」「どんな」価値が提供できているか、といったことが明確に答えられなければいけません。

(2)ダッシュボードを見る見ないはモチベーションに左右されていないか?
ダッシュボードを定期的に見る機会は設けておらず、必要な時に見るもので、そのうち必要であっても存在を忘れて見なくなってしまっているといったことはないでしょうか。
人の気持ちは移ろいやすいため、自分にとって価値のあるもので定期的に実行したいものは、モチベーションとは関係ないところで実行されるよう、仕組みや習慣化のアプローチが有効です。

ここで先ほどのヒントをダッシュボード活用に当てはめると、「誰かと一緒に」「既に習慣化しているものにくっつける」ということで、既に存在する関係者との定例ミーティングにダッシュボードを一緒に見ながら会話するコーナーを設ける、といったことが考えられます。

まとめ

「ダッシュボードは結局見なくなる問題」への解決において、ダッシュボードによる「継続的な価値提供」および「定期的に見る仕組み」がポイントになりそうです。

ダッシュボードを作る際は、「誰に」「どんな」価値を提供するのか、関係者で定義する。
定期的に見る仕組みとして、既に存在する定例ミーティングの中にダッシュボードを見ながら会話するコーナーを設ける。
その際、気付きや解釈などのコメントを入れておくことは議論のきっかけになるので有効。

ダッシュボードは数多あるツールのひとつです。
活用するもしないも私たち次第ということで。

コラム担当スタッフ

渋谷 泰一郎

株式会社ナンバー
代表取締役

ウェブと紙媒体の制作会社を経て、ポータルサイトのニュースサービスを担当。その後、広告代理店にてウェブアナリストとしてクライアントのウェブサイト、広告、SNS、スマートフォンアプリの分析および解析を担当する。
2014年から個人事業として独立。株式会社ナンバーを設立。
大規模サイトから中小のウェブサイトまで、多数サイトのKPI設計からアクセス解析、改善案の提案までを手がける。

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