コラムバックナンバー
Option合同会社 柳井 隆道
発信元:メールマガジン2023年3月22日号より
知的な仕事において情報の収集は大切です。当然ですが正しい情報を収集することが必要で、誤った情報は掴まないようにしなくてはなりません。おそらくこのコラムの読者の方は分析なのか、企画なのか、情報や知識をもとに仕事をしている方が多いと思います。デジタル化の中で仕事における知識・情報の重要度が増しており、以前よりも情報収集という作業の重要度が増しています。
アカデミックな世界での情報の収集方法は先行研究を調べる、そのために論文データベースを検索するなど、ツールや方法が明確に決まっています。正しい方法をとらないと研究として認められません。ではわれわれの仕事における情報の収集方法というのはどういうものでしょうか。
知りたい情報に関する情報ソースを探し出すことが必要です。その際に多くの場合検索という行動をとるでしょう。つまり検索する技術、知りたい情報を検索結果から引き出す検索方法の技術が重要になります。これについてはある程度慣れている方も多いかもしれませんが、日本語だけで検索するのではなく、英語でも検索してみることをおすすめします。特に知識が高度なものについては日本語の情報では限界があります。英語で同じ意味の言葉で検索すると見える情報の世界が広がりますよ。
そしてより重要になるのが情報の真偽を見破る技術です。ウェブの検索結果の中には正しい情報を提供しているサイトもあれば、誤った情報を提供しているサイトもあります。Google検索も特定の分野については情報のソースが正しいものでないと上位に表示しないようには努めているようですが、必ずしも正しい情報を提供しているサイトを上位に表示しているわけではないですよね。厳密には情報自体が誤ってはいないのですが、最新の情報ではない、あるいはどのバージョンに適合した情報なのかがわからないということもあります。特にウェブに出ている情報の多くはそのあたりの情報の正しさを伝える作法が統一されておりません。というか当たり前のように間違った情報をコピペで作っているところもあるので、それ以前の世界ではあるのですが。
アカデミックな論文では査読済みのものであれば情報の正しさが担保される、つまり論文データベースの場合はよほどのことがないと検索結果から間違った情報を掴まされることはないと考えていいので、そこは安心です。そういった情報に頼るというのも一つの手かもしれません。
日常的に信頼できる情報を提供しているソースのもののみを信じるというのもありだと思います。ただそれを判断するのはあなたです。有名であっても正しいとは限りません。自分なりに正しい情報と突き合わせてそのソースを信頼していくという作業が必要になるでしょう。
ただ何より重要なのは一次情報にあたるということです。公式ドキュメントはそうですし、GitHubのリポジトリにあることも最近は多いので参考になります。特にプログラマの世界では公式ドキュメントを読むことは必須のスキルと言われています。GA4についても同じことが言えませんか?とにかくツール自体の更新が早いので、巷のウェブ記事は誤ったものを書いたつもりがなくても古くて意味をなさないということもあります。そういう時に頼れるのはGoogleによる公式ドキュメントですよね。翻訳されたものの場合、誰かが翻訳したというフィルタが入ってしまうので、できれば原文でも確認したいところではあります。
また情報に対して常に正しいかどうか疑いをかける姿勢は重要です。最近ChatGPTが流行っていますが、情報を得るのが目的でChatGPTを使うのであれば、そもそもChatGPTがどういうものか、どんな挙動をするものなのか(何に基づいて何を返しているのか)、そこからどうやって情報の真偽が担保されるのか(されないのか)、それは把握しておかなければなりません。アルゴリズムを理解する必要はないですが、ロジックの特徴を把握しておく。これはちょっとしたコツが必要ですが、GPTの類に限らず他のツールにおいても似たようなアプローチは重要です。特徴を理解したうえで、適した使い方をするということです。向いていない使い方をしない。でないと出てきた情報に対して責任を取れませんよね。
われわれが知的生産にかかわる以上、こういった姿勢とスキルはスタート地点になるものです。どんなにロジカルに物事を導き出せたとしても、おおもとの情報が間違っていたら意味がありませんからね。
東京大学を卒業後、webマーケティングやサービス企画、システム開発などに従事。
デジタルマーケティングの世界に落ち着き、事業会社、広告代理店を経て2014年に独立。
現在は大小さまざまの事業会社、広告代理店などに対して、テクノロジー観点からデジタルマーケティングの支援を行っている。データ計測の設計、実装から分析、マーケティングオートメーションや広告運用などの施策との連携まで扱う。
さまざまな規模の経験から、企業の身の丈にあったデジタルマーケティングの企画に強い。フリーランスで活動していたが、2017年から法人化。
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