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あるBtoCのWebサイトの状況を分析していたとき、全体的にモバイルのトラフィックのコンバージョンの状況が非常に良いことに気が付きました。どの切り口で見てもコンバージョン数としてインパクトがしっかりあり、デスクトップのトラフィックよりもコンバージョン率が良いのです。何をいまさらという感じかもしれませんが、モバイルトラフィックの行動には迷いがあまりないというか、ストンとストレートに行動しているように見受けられました。

一方デスクトップのトラフィックは週末に減少しがちです。行動でも何度も訪問いただくのですが、情報収集や比較検討を繰り返すもののなかなかコンバージョンに至らなかったり時間がかかったりしています。ユーザーのカスタマージャーニーとしては一定数モバイル端末もデスクトップ端末も両方利用しているはずですが、モバイル端末は完全に日常の普段使いで利用し、片やデスクトップ端末は仕事や昼間の時間帯といった限定的な利用が増えているとも捉えられます。

モバイルは行動や意志が明確なデバイス、デスクトップは熟考して比較検討するデバイス。

もちろんこんなに簡単な話ではないのですが、意思が決まり迷いが少なくなればモバイル端末の方がより意志を行動に移しやすいということなのでしょう。「何かをしたい」と思ったら皆さん手元にスマートフォンがありますからね。グーグルが言うところのマイクロモーメントです。

モバイルの方がデスクトップよりも状況が良くなったことをどう捉えるか。

「モバイル向けのUXをもっと良くする」というのはそれとしてあるのですが、意図しているのはそこではなく、なぜモバイルでは迷いが少ない行動が見られるのかを考えたいところです。Webサイトの外側で情報収集や比較を終えてやってきたと捉えれば、Webサイトの外側の活動の重要性を再認識する必要があります。

Webサイトだけが接点ではないはずです。それ以外の接点での取り組みがそれほど計画立てて行われていなかったりその場しのぎが中心であれば、そこにまずは改善のヒントがありそうです。

Cookieや端末の分断などでカスタマージャーニーの把握が難しくなったいま、さまざまな接点でどれだけ関係性を積み重ねられるか、温められるかは重要な取り組みです。ソーシャルメディアのタイムラインだったり口コミだったり、広告やメディア露出だったり、BtoBであればニュースレターやオンラインセミナーなどもあるでしょう。そのような接点を重ねて、カスタマージャーニーのログに点として小さく残る比較検討の機会をいかに設けてもらえるか、それにつながる打ち手をしっかり行えているかどうか。

もちろん広告やメルマガやソーシャルメディアの取り組みはどの企業もやっていますし、新しい話ではありません。しかし、消費者の行動のいくつかのフェーズに対して欠けている取り組みはないですか? 社内で取り組みは分断していないですか? 連携できていますか?

分析や計測の側面としても、一本のカスタマージャーニーとして把握できるに越したことはないのですが、線をつなげることに労力と予算を費やすよりも確実に接点を作り温める優先度の方が高いですし、何よりも着手や改善として取り組みやすいはずです。

接点を。もっと接点を。私たちはもっと意識して顧客にアプローチしていかなければいけないですし、Webサイトに誘導するだけでなく、さまざまなチャネルにおいてカジュアルな関係性を作っていかなければいけません。

コラム担当スタッフ

いちしま泰樹

いちしま 泰樹

株式会社真摯
代表取締役
真摯のブログ

外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。

マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。

著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。

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