コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2022年7月13日号より
御社のGA4がいまひとつなのは「データ収集」を出発点としているからかもしれません。もちろんツールに限った話ではなく、データ収集を出発点とした分析は有意義なものにはなりにくいです。
何か課題があり、それに対して大小の仮説があり、そこを出発点としたデータ収集であれば良いのですが、どうも多くの場合そうではない印象です。「こういうデータを計測しておくとおもしろそう」「この機能を使うとこんなデータが取れるらしい」「いつか役に立つはず」といった「とりあえず計測」の多くは有効活用されません。網羅的なUIのクリック状況の計測などはそれにあたるでしょうか。
例えば「標準でページスクロール90%を計測できるらしいから、この機会に追加で細かくスクロール率を計測しよう」という発想は悪い兆候です。計測ありきで話を進めています。その計測は必要なのか、課題に対してその計測は有効な手法なのかを考える必要があります。このケースで計測するのであれば(課題の前提が必要ですが)、コンテンツ内や末尾にある行動喚起要素の位置まで到達したかどうかを計測した方がより有効かもしれません。
データは眺めるためのものではありません。「いつか必ず役に立つ」というのも稀でしょう。データをどう使いたいかが明確でないと、適当な姿勢で「ぼんやりと」「とりあえず」計測することになり、いざ分析の際には使い物にならず計測し直しが発生します。少しでも仮説があれば「単にイベント発生のカウントだけでなく、要素種別の判別も必要だ」となり、必要な分析軸をパラメータで取得する視点が生まれます。「とりあえず計測」ではその視点は生まれません。
GA4の導入はGoogleアナリティクスを利用していたサイトに平等に降りかかった災難なので、そこまでデータドリブン意識の高くない企業にとっては面倒な仕事であることは同情します。しかし前向きに導入しようとしているのであれば、「なぜ追加でそのデータを計測するのか、どのように利用しようとしているのか」を意識してみてください。きっと「これは不要かも」「これとは別に違うデータをとった方が良いかも」という発見があるはずです。
もしかしたら「支援会社から言われるがまま積み重ねてきた計測の数々を見直す貴重な機会」です。長い間積み重ねたカスタマイズ計測がありながら「計測しているものはとりあえず近い状態で計測する」と無思考で判断するのではなく、「とりあえず計測」の罠に気付いてください。もしかしたらもう導入を終えてしまったかもしれませんけれども。
GA4であれば追加のカスタマイズ計測によるデータ収集は「課題」や「仮説」が出発点でありたいです。必要な分析軸や粒度を決めるのは仮説です。そこからの要件定義であってほしいです。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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