コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
発信元:メールマガジン2022年5月18日号より
この1週間で見かけた記事の中で、興味を引いた記事を2つ紹介します。どちらも共通して、新規と既存のバランスを掌握したり、早い改善サイクルや打席の多さ、データドリブンで打ち手を調整していると感じたものです。
povo2.0の基本料0円「やめる理屈がない」 KDDI高橋社長が言及 楽天の月額0円プラン廃止で – ITmedia NEWS
KDDIの代表がpovo2.0の手応えとして「やってて面白い」と話し、その理由に触れています。
高橋氏は「やってて面白いってのがpovo2.0の印象。もともとは携帯におけるDXだと思ってやりはじめた」と説明。
「今までの通信・携帯は契約いただいてからお客様と向き合う時間が2年後だったりするが、povoはどんどんアプローチしていかないとトッピングに来ていただけない。われわれからすると、お客様を見ていろんな取り組みができるというのはものすごく面白い」
短い記事のほんの一部分ですが、興味深い要素が見え隠れしています。
・顧客をしっかり見ている
・早い改善サイクルを回し、データドリブンで打ち手を調整している
・従来のやり方とは異なることをしている
オンライン専用の携帯電話プランですのでよりSaaSビジネスに近いモデルかと思います。MRR(毎月の収益)、ARPU(顧客あたりの収益)、チャーンレート、ユニットエコノミクス(顧客あたりの収益性)などをおそらく追いかけながら、データドリブンで打ち手を調整しつつ、一方で顧客の動きをしっかり見ている様子です。しかも早い改善サイクルを回しています。新しい顧客の獲得も既存顧客へのアプローチも、ともにバランスを取りながら見る必要があります。
一定の歴史があり規模も大きい企業かもしれませんが、非常にスマートな動きに感じました。
もう一つの記事です。
バズらなくてもいい!?「北欧、暮らしの道具店」YouTubeの作法:日経クロストレンド
有料の記事ですが、後半ではYouTube動画コンテンツの視聴状況をどう評価し、育てようとしているかという話が展開しています。
・新規顧客と既存顧客の反応をともにしっかり見ている
・多くの打席に立っている
・データを追いつつ、一方で一喜一憂せず、そこからセンシティブなものを感じ取る
記事では、いくつかある指標の中でも「登録者と未登録者の視聴時間の割合」、つまり新規顧客と既存顧客の視聴状況のバランスを追っていると紹介しています。新しい層との接点としても重要、かつ既存ファンの支持も得続けなければいけない、そのためにコンテンツはどうあるべきか。数字に一喜一憂するのではなく、一方でその数字からセンシティブなところを感じ取り、かつ多くの打席に立ってチャレンジを繰り返す。なかなかしびれる内容です。
2つの記事に共通するのは、顧客の反応をしっかり見ているということ。そして早い改善サイクルや打席の多さ、データから打ち手を調整するということ。
中でも、新規顧客と既存顧客のそれぞれのアプローチは、一定の組織になると部門が別になり、それぞれで打ち手やKPI管理を行いがちです。それぞれが自分の持ち場を守るようになれば、両者のバランスの維持は難しくなります。上位層の誰かがそのバランスを見なければいけません。
企業の規模も取り組みも異なりますが、「顧客を見る」「打ち手を打つ」「データから意味を読む」と基本に忠実でありつつ、それをもっとバランス良く、かつ継ぎ目なく流れるように次の一手につなげていく、その先に顧客からの支持があるのだろうと受け止めました。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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