a2iコラム
Option合同会社 柳井 隆道
発信元:メールマガジン2022年3月2日号より
デジタルマーケティング、「マーケティング」の部分は以前から大きくは変わりませんが、「デジタル」の部分が高度化し、専門化してきています。つまり「デジタル」の部分が肥大して厄介になってきている。だからこそ「マーケティング」とは別に「デジタルマーケティング」という言葉が使われるという側面はあります。
マーケティングなのでお客さん、ユーザなど「人」のことを考えていればいいという言葉を聞くことはあります。もちろん人抜きにデジタルマーケティングを語るのは意味がありません。しかし「デジタル」の部分、それが実現のための戦術論であったりするのですが、IT/機械抜きに語ったところで、実現できない単なる空想にすぎないアイデアで終わってしまうのです。
人だけを意識していればいいというのは、単なる精神論であって、現実にうまくやっていくためには不十分なのです。
機械がどのように動くのか、システムがどのように動くのか、その原理を理解していないと現実問題として適切なアクションをとることができません。
典型的なのが運用型広告でありまして、マーケティング的にやりたいことを機械を適切に操作することによって実現するものです。以前は人間が手動で入札調整していましたが、今では自動最適化が当たり前、背後にはプラットフォームの機械学習のエンジンがあります。
人間がやるべきことはマッチタイプや入札金額を決めることから、ランディングページを作ること、コンバージョンをいかにして効果的に学習させるかというポイントに移り変わってきました。そこでは機械学習のロジックがあるため、コンバージョンの欠測は単なる成果の数の減少という意味だけでなく、場合によってはバイアスのある、不適切な学習につながるようになりました。
広告に限らずSEOも結局自然検索結果という機械の生成物に対処するという側面があります。そこにおいては、10年前の技術と今の技術でできることは違います。いかにGoogleがユーザのことだけを考えていればいいと言っても、技術によって実現できることが違う以上、10年前と今とではSEOは全然違うものになるのです。10年前は機械がテキストの意味を解釈することは現実的ではありませんでした。今ではBERTの登場などに見られるように、明らかにテキストを扱う技術は進歩しています。
SEOに携わる人はこういった技術に詳しくある必要はないかもしれませんが、Googleがどんな技術を持ってるか、興味を持っておくことは大切かもしれません。自然言語処理に限らず、ディープラーニングをこれだけプッシュしているということはディープラーニングをそれなりに多くのところで活用していると考えるのが自然でしょう。
ソーシャルネットワークも運営社側の意図を含むブラックボックスではあるものの、結局フィードに現れる投稿は機械が生成しているものなのです。人間が気まぐれで出しているものではありません。つまり何らかのルールなのか、何らかの目的関数を最大化するロジックなのか、そういったものがあるはずです。以前は単純に投稿のタイムスタンプ順で表示していたフィードを、今では運営会社にとって都合のいい並び順で機械を使って表示することを実現できるようにしました。
いずれにせよ対峙しているのは機械であり、しかも機械学習を含む高度化の道をたどっているわけです。単に決められた既存のITシステムを操るのとは違った、機械学習と向きあうことを避けられない時代になっています。自分が機械学習モデルを構築する立場でなかったとしても、望ましいアウトプットを出すためには向き合わないと仕方がないのです。
1. データ収集
2. 学習(モデル構築)
3. モデル検証
4. タスクの実行(予測や異常検知など、実際のビジネスにおいて学習したものを活用する)
というパイプラインがセットになっており、このパイプラインと向き合っている、むしろこのパイプラインの中にあなたの業務が組み込まれてるということでもあります。デジタルマーケティングというのは人だけでなく、日々進化するIT/機械と対峙する仕事なのです。
東京大学を卒業後、webマーケティングやサービス企画、システム開発などに従事。
デジタルマーケティングの世界に落ち着き、事業会社、広告代理店を経て2014年に独立。
現在は大小さまざまの事業会社、広告代理店などに対して、テクノロジー観点からデジタルマーケティングの支援を行っている。データ計測の設計、実装から分析、マーケティングオートメーションや広告運用などの施策との連携まで扱う。
さまざまな規模の経験から、企業の身の丈にあったデジタルマーケティングの企画に強い。フリーランスで活動していたが、2017年から法人化。
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