コラムバックナンバー
Option合同会社 柳井 隆道
発信元:メールマガジン2021年8月4日号より
残酷な真実ではありますが、情報リテラシーの話をちょっと。
■あなたが直接お金を払っているのでない限り、「○○の専門家」というのはニュートラルな意見を与えてくれないものである
一般に「○○の専門家」は
○○が重篤である、○○はヤバい、○○対策が必要です
という傾向にあります。それは○○が自分の商売のタネだからでありまして、○○についての不安が増大するほど、案件を受注して自分が(゚д゚)ウマーな思いをできるからです。案件とまではいかなくても、自分が注目を得る機会になるからです。特に普段注目を浴びていなかった人ほどそれが注目を得る千載一遇のチャンスであるわけで、逃してはならない機会なのです。
たとえば
○○に対して、Aという観点では対策が必要。Bという観点では対策は不要。あとは個別ケースに応じてAとBのバランスを考慮して結論を出す
のが本来正しいケースとします。この場合、あなたがその専門家にお金を払っていなければA側の意見しか出してくれないことが大いにあるわけです。
無料セミナーの類に気を付けなければならないのはまさにここです。残酷ではあるのですが、ある程度以上の(その専門家が満足する)お金を払わないとニュートラルで本当に役立つ見解を得られないと考えたほうがいい。少なくともその見解は何らかのフィルタがかかっている可能性を考慮して捉えるのが安全なのです。
○○の部分をいろいろな言葉に置き換えてみましょう。この読者であれば「GA4」あたりが最近ではちょうどいい言葉かもしれません。いやいや「感染症」なんて言葉もまさに当てはまります。コロナ騒ぎがなくなれば(研究者ではない、一般の人たちの間からは)「感染症の専門家」がお役御免になってしまうわけです。ちやほやされなくなってしまうのです。だから本来必要以上に煽る動機がある、そこは割り引いて見ないといけません。
■対価を払っている専門家との付き合い方
次にお金を払っている場合、あなたが直面しているイシューを解決するためにその専門家を使うというスタンスを持ってください。その専門家の意見を一つの材料にして、あなたがイシューを解決するための意思決定をしなければならないのです。その専門家に意思決定をしてもらうことではありません。場合によってはさまざまな専門家の意見に基づいてあなたが情報処理をして意思決定する必要があるわけです。専門家は自分が意思決定するつもりで仕事をしているわけではないことも多いです。
そしてあなたの立場、あなたにとってのイシューとの向き合い方を明確に伝える必要があります。たとえば方法に大きくCとDの2種類の選択肢があり、一般的にはCよりDが優れているとします。それでもあなたにCを取らざるを得ない状況がある場合、それを伝えることが重要です。どうやってもCを使うことが許されないのか、それともより安全にCを使う方法があるのか、そこを考えて提案してくれるのが本当の専門家です。
ここでこのCとDを
C=ユニバーサルアナリティクス
D=GA4
と考えたらどうでしょうか。あるいは弁護士などはイメージしやすいかもしれませんね。
対価を払わない場合、一般論にとどまり、ポジショントークが含まれる可能性がある。対価を払うと個別ケースを検討してくれる。そこに価値がある。しかし対価を払ってもあなたから情報を与えなければ一般論にとどまってしまう。専門家にとっても、一般論を超えた検討をする材料がないのでそれは仕方ないこと。実にもったいない。
専門家の言いなりになるのではありません。あなたは専門家の奴隷ではありません。そこには対価を払うという対等な関係があって、あなたも立場を主張する。あなたにとってのイシューが何なのかを伝える。そういったコミュニケーションこそが実のあるアウトプットを生みます。決して「コンサル丸投げ」では成功確率を最大化できません。
東京大学を卒業後、webマーケティングやサービス企画、システム開発などに従事。
デジタルマーケティングの世界に落ち着き、事業会社、広告代理店を経て2014年に独立。
現在は大小さまざまの事業会社、広告代理店などに対して、テクノロジー観点からデジタルマーケティングの支援を行っている。データ計測の設計、実装から分析、マーケティングオートメーションや広告運用などの施策との連携まで扱う。
さまざまな規模の経験から、企業の身の丈にあったデジタルマーケティングの企画に強い。フリーランスで活動していたが、2017年から法人化。
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