コラムバックナンバー
Option合同会社 柳井 隆道
発信元:メールマガジン2019年1月16日号より
◆ AIはまだポンコツ
先日ですが、こんな記事が話題になりました。
「現在のAIはとても頭が悪い」–グーグルのクラウドAI責任者が語る限界と可能性
ざっくりまとめると、Googleの人が「AIはまだポンコツ、当面ポンコツじゃないか」と言っていたという記事です。ポンコツというのは「類推や創造的思考、極めて独創的な思考などを含む汎用推論をAIにやらせることはできない」ということです。
これをGoogleの人が言っていたのは納得で、まさにGoogleっぽい主張だなと思ったのです。
Googleはまさにコンピュータ(AI)によって世の中のあらゆるイシューを解決することを目指す会社で、人間しかできない「類推や創造的思考、極めて独創的な思考などを含む汎用推論」は本分にはしない会社です。
◆ AIが得意なこととは?
AI、とりわけ機械学習のアルゴリズムが得意とするのは大量のデータを処理して
– 目的の変数がどうなるかを予測する(教師あり学習をすること)
– 似たものを分類すること(教師なし学習)
– ゲームなど選択とそれに基づく結果があり、結果から何らかの報酬を得るなかで、報酬込みで最終的に最も得をする(ゲームに勝つ)ように判断させ続けること(強化学習)
です。前提条件として大量のデータが必要になるのが特徴です。
人間が行うような類推や創造的思考というのはこれに含まれないわけです。人間は決して大量のデータに基づいて類推を行っているわけではないのです。こういった思考の中で人間が材料としているデータなど、AIからすれば不十分なデータ量でしかありません。
◆ マイクロモーメント
Googleは以前から「マイクロモーメント」という考え方を重視してきました。マイクロモーメントとは、
人々が「何かをしたい」と思い、反射的に目の前にあるデバイスで調べたり、購入したりという行動を起こす瞬間
です。「モーメント(moment)」とは直訳すると「瞬間」という意味です。Googleは人々の瞬間の行動に着目し、
「ある瞬間において、その人間が与えられた環境の中でどう行動するか?」
をイシューとしているのです。これはAIの得意とする考え方に近く、一方でわれわれがマーケティングの世界でよく使う「シナリオ」とは異なる考え方です。
ある瞬間における人間の行動(○○するかどうか)を与えられた環境という変数から予測するというのはAIが得意とする世界観です。ここでいう与えられた環境というのは、そのユーザの使っているデバイスであったり、通算ウェブサイト訪問回数であったり、商品の検討期間などがあたります。ユーザのそれまでの経験の累積和を変数化したものと考えればいいでしょう。
一方でシナリオは時間の経過です。時間の経過とともに人間の心が変化していく流れと行動の全体です。ふわっとしたシナリオ全体を扱うのはAIは苦手とするところです。仮にシナリオを予測するにしても、現実的に集められるデータでは教師データとして少なすぎるのです。
ところが「ある瞬間における人間の行動がどうなるか」という問題に落とし込んだ時、AIが扱いやすい問題になるのです。Googleが「モーメント」という言葉を強調する理由はここにもあるのかもしれません。逆に言うとコンピュータにはない人間の強みがシナリオ的なアプローチや創造的思考にはあるわけで、人間がマイクロモーメントばかり考えていても不十分ではないでしょうか。
「アンチ」モーメント的な考え方をするのも人間の仕事かもしれませんよ。
東京大学を卒業後、webマーケティングやサービス企画、システム開発などに従事。
デジタルマーケティングの世界に落ち着き、事業会社、広告代理店を経て2014年に独立。
現在は大小さまざまの事業会社、広告代理店などに対して、テクノロジー観点からデジタルマーケティングの支援を行っている。データ計測の設計、実装から分析、マーケティングオートメーションや広告運用などの施策との連携まで扱う。
さまざまな規模の経験から、企業の身の丈にあったデジタルマーケティングの企画に強い。フリーランスで活動していたが、2017年から法人化。
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