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少し前の話になりますが、2025年2月に「Google 広告 P-MAX 解体新書 ~究極の自動化とデータドリブンアトリビューション~」というオンラインセミナーを企画し、自ら登壇いたしました。

【活動報告】オンラインセミナー「Google 広告 P-MAX 解体新書 ~究極の自動化とデータドリブンアトリビューション~」|2025/2/19(水)

どのような内容だったかは前述の活動報告や過去のアーカイブ配信を参考にしていただければと思いますが、P-MAX という超絶ブラックボックスな仕組みを、Google が提供するドキュメントや田中個人の経験則を元に、外から見て中身を類推して仕組みを解説するというのが主な内容でした。

a2i セミナーの中でも久しぶりとなった広告テーマの回、しかもディープな内容だったのですが、終盤の質疑応答では30件を超す数の質問が寄せられ、参加者の皆さまも悩んでいることが容易にうかがい知れたのが強く印象に残っています。時間の関係ですべての質問に回答できず申し訳ございませんでした。

Google AI を活用した究極の自動化キャンペーンである P-MAX をテーマにセミナーを実施したこともあり、AI と上手く付き合っていくにはどうすると良いのだろうか?ということを自分なりに考えてみました。

自動化されたシステムは全く直感的ではない、だからこそ分かりにくい

P-MAX キャンペーンを例に取れば、このキャンペーンを使うことで「設定した目標に向かって」「システムが自動的に」「すべて良い感じになるよう調整してくれる」というものです。システムが自動的にすべて良い感じになるように広告を配信するために、広告のクリエイティブやオーディエンスシグナルをインプットしたらあとはお任せという仕組みです。

Google 広告の管理画面上ではこれらインプットしたデータがどのように活用されて、結果どうなったかという情報がほとんど可視化されません。これは可視化をすることで、視覚的かつ断片的な情報だけで物事を推察したり判断することを避ける狙いがあります。オンラインセミナーでも触れましたが、P-MAX の仕組みを理解すれば、これらの情報が可視化されたところで打てる手立てはありませんし、自動化ゆえにキャンペーンの効果を最大化させるはずが、人の手が介在することで本領が発揮できなくなるという奇妙なことに繋がりかねません。

検索連動型広告のように、広告を表示させたいキーワードと広告を設定し、意図した検索のタイミングで広告が表示されるのは直感的に理解できます。しかし、P-MAX のような自動化されたキャンペーンでは、内部で複雑な処理や分岐を行った上ですべてをコントロール(アウトプット)するため、これは全く直感的ではありません。理解に苦しむのが普通です。

このようにシステムの自動化が進むということは、インプットとしてどこの何を触ったらアウトプットがこうなった、だから結果としてこう処理しているはずだ、というリバースエンジニアリング的な思考が通じなくなり、直感的に仕組みを理解することはできなくなります。

つまり、ブラックボックス化されている自動化システムを使いこなすには、公表されている仕様や仕組みからブラックボックスの中身を推測することが大切です。「どのようなインプットを行うとどのように処理をされるのか」ということを正しく理解し、適切なデータを用意し、それをシステムにインプットさせることがとても重要になります。

AI を活用するためのインプットは何か?インプットの質を高めるにはどうするべきか?インプットさせるためのデータ形式はどのようにするか?これを考えることがヒトに与えられた AI との上手な付き合い方のヒントになります。そして、これを実行するために仕組みを正しく理解するということも重要になるでしょう。

※ちなみに P-MAX キャンペーンのケースで言えば、広告フォーマットをすべて登録する、オーディエンスシグナルは顧客リストなど Google にも理解しやすいデータを与えることがインプットのベストプラクティスです

生成 AI に対するインプット考

ここまではシステムを駆動させるためのインプットについて考えてみましたが、視点を変えて生成 AI を活用するときのインプットについても考えてみます。

生成 AI を活用しよう!と意気込んで利用してみたものの、あれっ?思ったようなアウトプットがされないな……。みたいなことに遭遇したことはありませんか?僕はめちゃくちゃ遭遇したことがあります。

世の中を見回すと、高品質なアウトプットを引き出すためのプロンプト集が色々な所から提供されています。それを活用すると意図した物に近い、または、精度の高いアウトプットが得られるようになるというものです。

なぜプロンプト集が人気を集めるのか、自分なりに考えてみたのですが、生成 AI に関しても P-MAX と同じで、インプットに対して複雑な処理をしたうえで回答をアウトプットしています。一方でプロンプト集はある種のテンプレートで、高品質なアウトプットを引き出すために必要な事項が予め記載されており、必要な部分を編集するだけで高品質なインプットを用意することができるとも言えます。

つまり、高品質なアウトプットを求めるならば高品質なインプットが必要になるわけです。

余談になりますが、日本人は話の行間を読むことに長けた民族性があり、言わずとも分かるよなと言わんばかりに「言葉」を無意識のうちに間引いてしまうクセもあると僕は思っています。

だから、日本人が生成 AI を活用しようと思っても、インプットするべき前提情報を、無意識のうちに飛ばしたままインプットをしてしまい、結果的に行間を読んでくれないままアウトプットが返ってくる、思ったような結果が得られない……みたいな事は往々にして発生しているのだと思います。

生成 AI を活用するのであれば、意識して行間を飛ばさないようなインプットは心がけるべきです。

ヒトに対する言語能力は一層求められるはず

そんな AI 時代に必要な能力って何か?と問われれば、いちばんは「ヒトの言語能力(読解力と表現能力)」でしょう。

高品質なインプットを与えるために必要な仕組みの理解に注目すれば、難解なドキュメントを読み進めるシーンが多いので、ドキュメントをきちんと読み解くための読解力と、それに基づく理解力が必要になってきます。

高品質なインプットデータを準備するためには、表現能力も必要になります。高品質なアウトプットを求めるのであれば、プロンプトで適切な情報を漏れなく与えてあげる必要があります。システムは行間を完全に読んではくれません。

つまり、事業課題に対するビジネススキルも重要ですが、AI と付き合っていくためには、だからこそ、国語力、すなわち言語能力を磨くことが重要になるというのが、僕個人の中で強く思うところです。

AI 関係ない話ですが、情報をデジタル化するとある種情報が欠損します。例えば、対面コミュニケーションでは相手の表情、声(音の高低)、息づかいなど言葉以外にも得られる情報が多いですが、テキストコミュニケーションではそれらの情報がごっそりと削られてしまいます。ゆえに、テキストコミュニケーションの機会が増えれば増えるほど、表現や情報量を意識しないと受け取り方に齟齬が出たり、本来不要なはずの行間を読ませることにもなりかねません。

質の高いアウトプットを得たり、円滑なコミュニケーションを図るためのインプットは常に意識して動きたいものですね。

コラム担当スタッフ

田中 広樹

Yuwai株式会社
代表取締役

日本放送協会で放送エンジニアとしてキャリアをスタート、後にキャリアチェンジでインターネット広告の世界に飛び込む。

大手インターネット専業の広告代理店で約3年の勤務を経て、アナグラム株式会社(現:フィードフォースグループ株式会社(東証グロース)傘下)にて創業期メンバーとなる第一号社員として参画。11年8ヶ月従事の後、2023年8月に退職。2023年9月にYuwai株式会社を設立。

運用型広告のコンサルティングのほか、Google ショッピング(Google Merchant Center)やデータフィード広告のコンサルティング、Google タグマネージャー、Google アナリティクスといったマーケティング関連プラットフォームの活用など、デジタルの力を使って集客の支援を行っている人。

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