コラムバックナンバー
Option合同会社 柳井 隆道
発信元:メールマガジン2024年9月18日号より
データ基盤やCDP(顧客データプラットフォーム)を導入したものの、ダッシュボードを作るまで、データを見るだけで満足してしまう、燃え尽きてしまうケースは多いように見えます。プロジェクトがダッシュボードの構築やデータの可視化をゴールとすることが多く、たしかにわかりやすいアウトプットのゴールではあるので仕方ないのですが、それだけではコストをかけてデータ基盤を構築する意味は不十分です。エグゼクティブ向けのダッシュボード構築プロジェクトはそれ自体をゴールとする意味がありますが、現場が使うダッシュボードの構築をゴールとするのは間違っていると言っていいでしょう。
また「CDPの導入」などというと、大きなシステムの導入プロジェクトということでハードルが上がるのも事実です。その結果がデータの可視化で終わると、大きなコストをかけてシステムを導入し、結局利益を生み出せずに終わるということです。CDPの導入とか大それたことを考えずに、先に具体的なデータ活用のお題目を掲げてデータ処理システムの一式を作ってみることをおすすめします。
「Google広告配信のVBB(価値に基づく入札戦略)のため、カスタマイズしたコンバージョン値を計算する」「LINEのメッセージ配信の優先順位を設定する」など、一つでもいいので具体的な施策から入る。「データを見る第一歩」ではなく「データを活用する第一歩」を踏み出すこと。活用するためにはおのずとデータを見る必要が出てきます。しかもデータを使う目的が明らかになっているため、データの見方も大体決まっています。
データを活用する処理を作ると、データを整備することの必要性が明らかになってきます。またデータ活用の運用フローが出来上がると、ワークフローの安定性・完成度を維持しないと運用が止まってしまうことを痛感します。結果的にデータ基盤に必要なことを一つずつ乗り越えていくことになるのです。
データ基盤を構築したうえでデータの活用シナリオの実現までコミットするという大きな覚悟がないのであれば、とにかく小さくていいので一つの施策のためのデータ運用を始めるのでいいのです。幸い今では技術の進歩もあり、スモールスタートしやすい環境が揃ってきています。
以前はデータウェアハウス(DWH)にいろいろなデータを格納する、そのために数多くのデータ転送のバッチプログラムを開発するのが必要でした。ところが最近ではデータベースのデータをAWSのS3やGCPのCloud Storageにファイルを置いておけば、細かいスキーマ定義を別途行わなくてもどんなDWHにも取り込める技術も出てきています。またDWHを導入しなくても、S3にデータファイルを置くだけでそのデータに対してSQLのクエリを実行し、集計するのが簡単にできる方法もあるのです。また運用し始めてからDWHをリプレースしたいという場合でも、生成AIなどを使えばDWH間でのクエリの変換が簡単にできるようになりました。
最初に少しだけ工夫をしてデータを保存しておけば、後からの技術的な仕様変更への対応やシステムのリプレースは比較的容易になっています。これらの最新の技術ではある程度の規模までであればDWHは不要ですし、規模が一定以上になってDWHが必要になったとしても、最初の工夫があれば簡単に移行できます。
最新のデータスタックでは高度で大規模なことをするのではなく、データ運用の裾野を広げる技術も出てきています。データ運用の技術的ハードルははっきりと下がっています。だからこそ何でもいいので、一つでもデータ活用の何かを試してみることをおすすめします。
東京大学を卒業後、webマーケティングやサービス企画、システム開発などに従事。
デジタルマーケティングの世界に落ち着き、事業会社、広告代理店を経て2014年に独立。
現在は大小さまざまの事業会社、広告代理店などに対して、テクノロジー観点からデジタルマーケティングの支援を行っている。データ計測の設計、実装から分析、マーケティングオートメーションや広告運用などの施策との連携まで扱う。
さまざまな規模の経験から、企業の身の丈にあったデジタルマーケティングの企画に強い。フリーランスで活動していたが、2017年から法人化。
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