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先日Safariの新しいバージョン(13)がリリースされ、ITPも最新の2.3が適用されました。ITPの細かい内容については省略しますが、実機のSafariで検証していて思ったことを書かせていただきます。

■ITPが難しい

まず今回のSafariでは

「検索広告からの流入時、広告からの誘導先リンクにクリックIDを入れていると、流入先サイトでJavaScriptが生成するすべてのcookieの有効期限が1日になる」※

挙動が見られました。

※ITPの仕様を正確に網羅した記述ではありません。わかりやすく実害の大きい例を紹介しています。また必ずしも毎回すべてのJavaScript生成cookieがこのようになるわけでもありません。今後のSafariのリリースで修正される可能性もあります。

もともとのITPの仕様(2.2と2.3)にはない挙動が一部見られたのです。本来であれば

「検索広告からの流入時、流入先サイトで検索広告に関連するcookieの有効期限が1日になる」

挙動でなければならないのですが、それ以外のcookieまで巻き込まれてしまっています。

とこれだけでも難しい、理解が大変だと思った方も多いのではないでしょうか。そもそも元々の仕様が難しいうえに、公式のドキュメントと一部異なる挙動が見られ、それが施策上の実害につながる(ABテストができなくなる、接客シナリオがつながらなくなる)ことが明らかになったわけです。

こういったことを検証するのは専門家でいいのですが、先日私がブログに記事を書いたところ、それでも難しいという声をマーケターの方からは多くいただきました。そこで思ったんですよね。もうこれはエンジニアでないと扱えない問題なのかなと。

(参考までに記事のURLです)
ITP2.3までの変遷・最新の仕様と挙動の違い/対策の必要性と方法
https://www.marketechlabo.com/itp-latest/

■プラットフォームに頼らない、自前での対応が必要

以前のITPではプラットフォーム側の対応を待てばいい、マーケターからすると待ちの姿勢でいいという方針で私は考えていましたが、今回のITP(というよりSafari)の挙動を見るとどうやらそうもいかなくなっているようなのです。

一般にプラットフォームの対応を期待すべきなのはツール(プラットフォーム)Aが原因で、ツールA自身が機能不全になってしまうケース。もしくはツールAが原因で、ウェブサイト全体が機能不全になってしまうケースなのです。しかし今回発生しているのはツールAがトラッカー認定され、ツールBが機能不全になってしまっている問題です。

ITPに限らず、ツールAの影響でツールBが機能しなくなる場合、どちらのツールもお互いのツールはサポート対象外というサポートの狭間に陥るわけです。

つまりこういうケースではユーザ企業側に自前での対応が必要となります。調査・実装工数などのコストもユーザ企業が負担しなければなりません。ITPに関してはフロントエンドとサーバ両方のエンジニアとしての知識がないと挙動や対策方法を理解できないのです。一般のウェブ担当者やマーケターが勉強してそこに立ち入るのは極めて困難ですし、それを求めるのは間違っているレベルのものです。

■新しい技術のリリースに際しユーザ企業側に求められるスタンス

公式にリリースされる情報も重要ですが、必ずしもそのとおりに動作するとは限らない。疑ってかからなければならず、それを検証して対策するのには技術が必要なのです。SEOと少し似ていますかね。SEOにある程度携わったことのある方は「Googleの言っていることと実際の挙動が違う」と思ったことが何度かあるでしょう。結局システムである以上、意図したとおりに動作しないことはあります。エンジニア目線でいえばこれは仕方のないことだと理解できます。しかしこれでビジネスに実害が出るのであれば酷な話ですよね。

使用しているプラットフォームのあらゆる技術的なリリースに対して

仕様を確認する→検証する→対応方法を考える

が必要になるのです。もちろん一つのプラットフォームに過度に依存しないでリスクを分散するというのは重要ですが、ウェブブラウザはユーザが勝手に使うものなのでそんなことは言っていられません。結局はエンジニアによる対応が必要になってしまうのです。

このような計測タグの問題に限らず、CMSやデータフィードなど、マーケターが接するウェブまわりの技術が高度化しています。一部の高度なことをやる会社だけが対応すればいいというものではなく、ITPの例では検索広告を実施するすべての中小企業も対象になります。

■マーケティングテクノロジスト

主にデジタルなマーケティングの世界でテクノロジーを操る人のことをマーケティングテクノロジストといいます。マーケターとも異なり、単なるエンジニアとも違います。データサイエンティストは主にデータの処理や分析側の人ですが、マーケティングテクノロジストはデータに限らず、このような計測実装やマーケティングオートメーションなども扱う広い職種になります。

マーケティングとテクノロジーの間にいる位置づけになるのですが、マーケター・運用者出身者ではなくSEなどのエンジニア出身者のほうが多いのです。やはりマーケティングの世界からエンジニアの世界に入っていくことは大変なのです。エンジニアよ、立ち上がれ。マーケティングの世界に貢献せよ。

コラム担当スタッフ

柳井 隆道

Option合同会社
代表社員
マーケティングテクノロジスト
marketechlabo

東京大学を卒業後、webマーケティングやサービス企画、システム開発などに従事。
デジタルマーケティングの世界に落ち着き、事業会社、広告代理店を経て2014年に独立。
現在は大小さまざまの事業会社、広告代理店などに対して、テクノロジー観点からデジタルマーケティングの支援を行っている。データ計測の設計、実装から分析、マーケティングオートメーションや広告運用などの施策との連携まで扱う。
さまざまな規模の経験から、企業の身の丈にあったデジタルマーケティングの企画に強い。フリーランスで活動していたが、2017年から法人化。

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