コラムバックナンバー
メールマガジン2017年2月1日号より 真摯 いちしま泰樹
先日、あるきっかけで1年半ほど前にa2iで行ったKPIセミナーの資料を読み直す機会がありました。
そこで改めて感じたのは、「実際に手を動かすプレーヤーのポジションであるほど、改善のフェーズであるほど、KPIは割合や比率の指標が中心になるのでは」というものです。アナリティクス領域の著名な方々の本を読んでいると、「KPIは割合や比率といった相対的な指標である」とはっきり述べていることがあります。エリック・ピーターソンや、『Lean Analytics』の著者2名などもそうです。「KPIは、生の数値データではなく、割合や比率、%や平均で表現される」「良い指標は相対的である」「良い指標は割合や比率である」などなど。
その説に触れたときは「どうなんだろう?」と半信半疑で、いまでもすべてそうではないとも思っています。経営陣やマネージャー層になるほど、「売上」「件数」といった実数で表す指標がKPIに含まれるのも自然なことだと感じるからです。
その一方で、経営陣やマネージャー層が持つKPIが分解され、実際に手を動かすプレーヤーに渡ったとき、KPIは割合や比率の指標が中心になるというのは同感です。「このセグメントの転換率をnポイント増やす」「フォームプロセスの離脱率をnポイント減らす」というようにです。改善のフェーズであるほど、現状のプロセス効率の向上がプレーヤーに課せられるタスクになりやすいからです。ただし、アーリーステージの「成長、成長!」のフェーズであれば、プレーヤーでも実数のKPIが多くなるでしょうね。
2年前に開催した「アナリティクスサミット2015」でのスタートトゥデイの清水俊明氏の言葉に、印象的なものがありました。「外部要因が強くコントロールができない指標はKPIにはしていない、言い訳のできない指標をKPIとしている」というものです。そこで紹介された、多くの従業員が共通に持っているというKPIも「割合や比率で表される指標」でした。
KPIは勝手に好転しません。季節要因や突発的事象で数値が大きく上下する指標は、やはりKPIには向いていません。コントロールできる指標、アクションで好転させられる指標が、KPIです。そうするとやはり、割合や比率の指標がKPIに向いているというのも一理あります。
実数をKPIにすると、その理由や裏付けが共有されにくいからというのもあるかもしれません。「週次のユーザー数をn人にする」よりも「週次のユーザー数を前四半期から10%増やす」という方が、仮にKPIが一人歩きしても根拠を持ったKPIとして理解しやすくなります。
実数で表す指標をKPIにする場合は、セグメントを切ると良いでしょう。全体で見るのではなく、「新規顧客」「再訪ユーザーのうち履歴が3回までのユーザー」「CVへの貢献度が高い特定カテゴリーのコンテンツ」というように、戦術のターゲット層や対象をフォーカスすることで、取り組む内容の意味が強調され、KPIも評価しやすくなります。
KPI設計に正解はありませんので、各社さまざまな視点があって良いと思います。その中でうまく機能していないKPIがあれば、割合や比率の指標に変えてみたり、特定セグメントに切るなど、試してみてください。
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