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メールマガジン2016年7月20日号より a2i代表 大内 範行
アナリティクスの技術や機能が進化するスピードは、ここ数年でかなり早くなった印象があります。同時に、データをできるだけ詳細に取得し、すべてのデータをつなげたい、という人々の要求も強くなってきました。
たとえば、店舗などオフラインのお客様行動も、リアルタイムに顧客データに反映し、ウェブの行動データ (Cookie) を紐つけて見えるようにしたい。まずは、その動きを顧客セグメントに応じて、分けて可視化していきたい。
そんなプロジェクトが「お客様データをすべて可視化しろ」という上層部の言葉からはじまったとします。でも、そんなシンプルな要望でも、完璧に応えようとすると、心優しい技術担当者の頭の中は、実現方法とそれを拒む壁の数々ですぐに一杯になってしまいます。技術が進歩したことで、アナリティクス担当者が楽になったのか? いえいえ、実際には状況はどんどん複雑化しています。
広告キャンペーンのデータ、別のドメインの事業部のデータ、オフラインのデータ、サイト内のKPIを取得するイベントやカスタムディメンションのデータ、そしてモバイルの計測。AMPなど分散していくコンテンツの計測。
複雑なタグの設定をシンプルにするために、タグマネージャの導入も必要で、JavaScriptやjQueryの理解だけでなく、タグマネージャの機能やUIを理解する必要があります。
今や、どのツールも、それ一つだけでお客様の問題を解決できる状況ではありません。
お客様ごとに、特有の壁があったり、過去のツールやデータのしがらみもあります。
データを取得するための技術知識、製品知識は、かつてよりも高度な専門性を必要としています。アナリティクスの現場には、より専門性の高い技術者が必要になってきています。
大きな企業では、社員として技術者を雇いはじめ、そういった技術者の採用からプロジェクトがスムーズに回りはじめた、という事例もあります。
また、アナリティクスツールの設定やDMPなどの構築のために、外部の人材を常駐に近い形で雇いながら、こうした導入設定のプロジェクトを進めていく、そんなケースも増えてきています。
こういった状況で一つ注意したいのは、技術者が「考えすぎないようにする」ことです。
大雑把でしょうが、技術を担当したいという人は、「他人を助けたい」「なんとか目の前の壁を越えたい」という静かな愛と情熱があり、複雑な手を駆使して実現しようとしがちです。
詳細なデータを取るために、シンプルなゴール設定ではなく 拡張eコマースタグを設定し、外部のキャンペーンのアトリビューションだけでなく、内部のプロモーションの関連性もデータとして可視化する。そのとき、ユーザーIDでログインしていれば、その値をカスタムディメンションに設定して、外部のCRMデータと連携してセグメントが分けられるようにしておきたい。
これを、複数ある各事業部の既存のサイトに設定していきたい。
しかし、ここまで来たら、心優しい技術者は「深呼吸」をする必要があるかもしれません。
「各事業部はタグの導入をしてくれるでしょうか?」
日々のサービスが大変で、こうした複雑なタグを設定するのに消極的かもしれません。
「データを可視化しろといった上司はダッシュボードを見てくれるでしょうか?」
あるいは、その可視化をした全体のレポートを見て、そのあとのアクションを明確に描いているでしょうか?。
「そういえばこのデータは何に使うのでしょう?」
ただレポートを出すためでしょうか?出てきたデータを改善に使うといっても、それがリコメンデーションなのか、リマーケティングなのか、こんなセグメントに対してアクションを起こしたい、という仮説も出来ていません。
技術担当者は「データを可視化したい」という高い要望に対して、一通り実現方法を頭に描いたら、すぐ実装に取り掛かる前に、チームから離れて一呼吸を置きましょう。
そして、できるだけ簡単な質問をしてみましょう。
「そのデータを本当に見ますか?」「データを見たあとどうしますか?」「何ができると効果的だと思いますか?」
「世界を複雑にしようとしている。本当は極めれば極めるほど世界はシンプルになるのだ」とそう言ったのがマラドーナなのか、スティーブ・ジョブズだったかは忘れましたが、その複雑さを肌で知っているのは、まさに現場の技術者です。
もっとシンプルに、最初のフェーズはキャンペーン変数を統一し、簡単なゴールを設定するだけで十分かもしれません。むしろその実装と並行して、広告担当者と効果的なリマーケティングについて仮説を立てる時間をとったほうがよいでしょう。
今後チームが成長していくフェーズがイメージできていれば、今回はタグマネージャを入れてもらう、というだけでも大きな進歩かもしれません。
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