コラムバックナンバー
メールマガジン2016年4月27日号より 衣袋 宏美
前回の私のメルマガコラムは「分析の型はどうやって身につけていけばよいのか」というタイトルで書きました。「で、その型は具体的には教えてくれないのか?」という指摘がありましたので、今回はいくつかの型について触れたいと思います。一応ここでいう「分析」とは、ウェブサイトの問題点の改善あるいは定点観測のために、定量的あるいは定性的情報を使ってデータの収集、分析、改善活動の一連の流れ全てを含むものとします。
分かりやすくするため、私が外部の分析者としてある事業者のサイトの分析依頼をされた場合に、一通り標準的な私なりの型どおりの手順で作業するとしたら、どのように進めていくだろうかという想定で考えていきたいと思います。戦略レベルの上流に立ち返ってコンサルティングすることはないという前提にします。
1)データの前にまずサイトを見る(定性分析の二つの方法と分析の型)
まずは分析/レポートの目的を確認します。目的が「定点観測」のためなのか「問題発見と解決をスポットで行う」ためなのかという点です。どちらも必要というハイブリッド型もあるとは思うのですが、目的をはっきりさせる必要はあります。
その上で、どちらの場合にも共通で最初にやることは、分析対象のサイトを見ることです。データをいきなりみることはしません。数字はいくらでもあとから都合よく解釈してしまいがちなので、まずは想定ユーザーの気持ちになって、サイトを訪問します。サイトが見やすいか、言葉遣いが分かりやすいか、操作しやすいかという部分の確認です。別の表現をするとすれば、UX(ユーザーエクスペリエンス)とかUI(ユーザインタフェース)あたりの領域の定性的な調査を行うということでしょうか。
ここで問題がありそうなページや箇所にあたりがついたら、ヒートマップ系のツールを導入して、そのページの利用者のマウスの位置やクリック動作、ページのスクロール状況などを確認します。ツールによっては、個々の訪問の動作記録を動画で見ることができたりしますので、ヘビーユーザーなどを選択して個々のユーザー体験を確認します。
つまりいわゆる定量分析だけでなく、定性分析と一緒にしましょうということがポイントです。問題発見と解決が目的の場合は、時間も費用も掛けられなければ、こちらで焦点を絞り込んで定量分析は一部しかしないこともあり得るでしょう。定性分析については以上、サイトを見る、ヒートマップ系を使う、という二つの方法とそれぞれの分析の型です。
2)TBSで全体を俯瞰する
次に定量分析で行う型について列挙していきます。5年前の下記メルマガコラムとダブる部分がありますが。
【メルマガコラム】データ分析における13の原則(2011年4月26日号)
まずはTBSです。T(トレンドでデータを見る)、B(目標や基準すなわちベンチマークを持つ)、S(全体でみるのでなくセグメント化しブレークダウンしてから見る)です。これはサイトの定量分析以外の例えば経営分析などでも汎用的に利用できます。トレンドでデータを見るのは、季節変動、曜日変動、時間帯変動と別の粒度でも見ていきます。セグメントは段々細かく見ていくことで、問題となっている箇所の原因を絞り込んでいく、といった具合に使う型です。
3)集客(流入)/接客(回遊)/成約(コンバージョン)の3段階で深掘りする
次は訪問(セッション)ベースとユーザーベースの分析で型は分かれます。
訪問ベースの分析の型としては、集客(流入)/接客(回遊)/成約(コンバージョン)の3つの段階に分けてデータをみていくという方法です。具体的にはどのようなユーザーが、どの参照元から訪問し、どのコンテンツをどのように見て、目的を達成したかを順にデータでみていきます。
ユーザーベースの分析は、同一人物の各訪問を統合して分析することになるので、利用する型が変わってきます。時系列で追っていく方法なので、少々難易度は高くなります。
そして参照元と閲覧コンテンツを評価するための数値指標は、大きく3つにグループ分けされます。「量」と「質」と「成果」の3つの視点です。
参照元を評価する場合は、訪問数が「量」の評価指標です。訪問の多い参照元が重要という評価をします。
「質」の評価指標の例としては、直帰率、1訪問あたりのページビュー数などです。どれくらい熱心な(質の高い)訪問だったかを量的に測る指標になります。
そして「成果」の評価指標は、コンバージョン率やコンバージョン数ということです。これと同様に閲覧コンテンツ別にも見ていきます。これらが評価指標の使い方の型です。
あと細かい分析技法的なところでは、経路分析のような読み解き方の難しい手法の代わりに次のような型を使います。
・参照元とランディング ページの組合せでみる
・ランディング ページと次の閲覧ページの組合せでみる
・任意のページの前後の移動をみる
・カート投入から最後の購入までのページ移動のセットを確認する
4)まとめ
私の場合は主だったものだけでもこれだけありますが、実際はサイトの成熟度合などの状況によって、どの視点が重要かは違いがありますし、手を加えられない部分の分析をしても仕方がないので、おのずと分析も、多くの型の中から一部を選択して組み合わせて効率よく進めていきます。
また定点観測が主目的であれば、先にKPI(重要業績指標)をある程度決めてから分析を始める場合もあれば、時間があればデータをまず網羅的に見る場合もあります。このように、ある程度分析の型を持っておいて、それらから選択し組み合わることを繰り返して分析を進めていきます。
私もさまざまな人のよい型を次々に取り込んでいますので、自分で考え表現した型もあれば、よそさまから拝借したものもあります。よいものはどんどん吸収して真似ることが大事だと思います。前回の私のメルマガコラムでも最後に書きましたが、a2iで提供している各種セミナーの多くが、あるテーマをもって開催していますが、それら一つ一つは特定の分析の型の話だったりしますので、さまざまな分析の型に触れてよいものはどんどん真似ていきましょう。
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