コラムバックナンバー
メールマガジン2016年4月13日号より 真摯 いちしま泰樹
先日、ある企業の人たちと雑談をしている中で、「オウンドメディアのKPIは何にすればいいですか、といった質問にどう答えていますか?」という話になりました。よくある質問だと思いますし、正解を答えにくい質問でもあります。
私からはまず、「どんな人」に「どんなこと」を期待しているのか、そのオウンドメディアでの体験でユーザーにどうなってほしいのか、ビジネスとしてオウンドメディアにどう機能してほしいのかをしっかり決めること、それが定まっていなければKPIも設計できないのではないか、という話をしました。
それらが明確であれば、的外れな指標をKPIとして選ぶことは少なくなるはずです。目的とゴールとターゲット層が定まっていれば、おのずとKPIの候補が挙がってきます。ただし、長い時間をかけてその推移を追うことになります。
加えてKPIは指標であり数字ですが、その数字の向こう側にいるユーザーがオウンドメディアでどう感じているかにちゃんと思いをはせることも大事です。記事内容やオウンドメディアやブランドに対して、どう感じているだろうか、です。
KPIの数字が変化しても、例えばユーザーの心がピクリとも動いていないと思われたり、サイトに期待していることが起きていないのならば、そのKPIは適切ではない可能性を疑えます。
常々私は、Webサイトの分析の根底にはユーザーとのコミュニケーションの意識が必要だと思っています。私のキャリアのスタートが接客業だったからかもしれません。「自分たちが提供するものがお客様にどう受け止められたか知りたい」の一つの方法として、Webサイトの分析のさまざまな手法があるのだと捉えています。その反応を手掛かりに、提供する「もの」や「こと」をより良くしていくのが改善のサイクルです。
ですので、数字データだけで判断しにくいような事象は、現場であれば店舗観察や行動観察、顧客層に対してはアンケートやインタビューで補おうとします。
オウンドメディアは長い時間をかけた取り組みとして捉えることが多く、オンラインで容易に取得できる数字だけでは分析や判断はむずかしいはずです。それもあって、数字データ以外の「店舗観察や行動観察」「アンケートやインタビュー」のような、環境やユーザーを理解する定性データの必要性を強く感じます。
とはいえ、オウンドメディアで様々な調査や分析ができるほど多くの予算を掛けているところは、まだ非常に少ないですよね。調査や分析に多くの工数をかけられないのも現実です。
KPIの数字の変化に一喜一憂するだけでなく、まずはできる範囲でその向こう側にいるユーザーにもっと思いをはせてみませんか。ちゃんと来てほしいユーザーは来てそうですか? その記事内容に満足している様子ですか? アクセス解析ツールの画面でわかるデータだけに頼るのではなく、生ログからはユーザー行動を追えますし、顧客層に近い知人に感想を求めることもできます。まずは簡単なところからヒントを探しに行くとよいでしょう。
デジタル領域の施策は比較的短い期間で効果を求められることが多く、その中でオウンドメディアはむずかしいポジションにあります。できるだけKPIの数字面でよい結果を残しつつ、ユーザー理解からの改善を地道に積み上げていってほしいと思います。
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