コラムバックナンバー
メールマガジン2015年6月24日号より a2i代表 大内 範行
今回は機械学習について書いてみたいと思います。先日出版した「新しいアナリティクスの教科書」では、少しだけ触れましたが、ここ最近興味を持って考えているテーマです。とはいえ、私の経験と知識は限られていますので、細かな点での齟齬はご容赦ください。
機械学習やAIは、ホットなテーマになっています。実用化のスピードが増し、今後数年で、その適用範囲は広がっていくでしょう。以下のエリアが特に期待できると考えられます。
・レコメンデーションなどサイト内の最適化
・広告予算やターゲットの自動化(アトリビューションや配信リスト作成)
・異常値の告知や原因分析
・改善ポイントのアドバイス
・アクセス数やコンバージョン、売上などの予測
機械学習といっても、それがうまく機能するためには、いくつか押さえておくべきポイントがあると思います。
– 何に活用するかアクションが明確である
– 成果判断の目標値が明確である
– 評価指標のデータが十分に整備されている
特に重要なのは、機械学習の成果を何で評価するか? その目標値の設定です。
たとえば、先日もアマゾンが、商品レビューの並び順など表示の最適化を機械学習をもとに行う、という話がニュースになっていました。
その小さなニュースから私が考えたのは、その場合の「ユーザーにとってよいレビュー」は何を目標データに決めるのか、という点です。それは、閲覧データなのか、「いいね」などクリックのデータなのか? 売上げデータなのか? 売上げデータだとして、それは商品ごとの売上指標なのか、それともレビューを見たユーザーごとの売上なのか? という点です。
ユーザーの心理から読み解いてみましょう。
「レビューのおかげで無駄な買い物をしなくてすんだ。アマゾンはネガティブなレビューもちゃんと掲載してくれるので信頼できる」
無駄な買い物を避けるため、点数の低いレビューから確認する行動のユーザーもいるでしょう。果たして、こういったユーザー心理をうまく反映できるでしょうか? 単純に商品ごとの売上を目標においてしまった場合、ネガティブなレビューがより見えにくくなるように働くことも考えられます。
次に、この機械学習にどんな判断指標を食べさせるのだろうか、という点です。
本当に買った人だけのレビューを判断できるのか? いたずらやステマのレビューを除外できるのか? レビューの「文字数」という要素を加味するのか?(詳しいレビューは役立つ)レビューの中のキーワードのあるなしを加味するのか?(「コスパ」あるいは、ファッションで「サイズ」という言葉など)
これらのデータの選び方によって、結果は変わってくるでしょう。
もちろん、アマゾンは一つの例です。私の考えるようなレベルで、アマゾンが間違いを犯すと言いたいわけではなく、機械学習を導入して活用するためには、皆さんの立場でそういった判断を事前にする必要がある、ということです。(たとえば除外データを機械学習が自分で判断することもありますが、何も決めなくてよい、という機械学習は、まだないと思います)
機械学習の難しい点は、結果が出ても、その理由がブラックボックスで、誰も原因を説明できない、そして、結果を保証できないという点です。過去にデータがない、あるいは不完全なデータによって、不本意な結果も出るでしょう。人間にとって7割8割の満足度の結果であっても、学習の改善を続ける、という姿勢が必要です。
日本のバズワードに対する過去の対応を振り返った時、利用する側の準備が不十分にもかかわらず、結果に完璧を求めて、「使えない」というレッテルを貼ってしまう恐れがあります。また、学習の期間を待てずに、カスタマイズを過度に要求し、人間が細かなルールを設定して、機械学習の意味がなくなる、といった事態も予想されます。
機械学習の活用で、日本が遅れを取らないためには、利用する側の姿勢が何よりも求められると思います。
2023/10/26(木)
オンラインセミナー「コンテンツマーケティングの本筋の話をしよう~オーディエンスビルディングの思想とその計測・評価法」|2023/10/26(木)
デジタルマーケティングは運用型広告に代表されるように「買ってくれる人」にフォーカスし、その獲得効率にしのぎを削ってきました。 しかし近年、こ …
2023/09/12(火)
オンラインセミナー「世界最先端のCRMを活用したマーケティングとは?」|2023/9/12(火)
マルチチャネルのデータをリアルタイムで活用することで何ができるのか具体的な事例と併せて解説し、世界最先端のCRMの現在地を把握することで今後 …
2023/08/23(水)
オンラインセミナー「ヒートマップ分析によるUX改善で叶えるSEO/CRO」|2023/8/23(水)
近年、WebページのUXはユーザビリティ・CVR改善の観点だけでなく、SEOにとっても重要なファクターであるとの認知が広がっています。本セミ …
【コラム】GA4標準レポート、探索レポート、Looker Studioの使い分け
株式会社JADE 郡山 亮こんにちは! 株式会社JADEでコンサルタントとして活動している郡山と申します。 普段はお客様がGA4を活用するための様々なコンサルティング …
私はアウトプットするのが怖い、アウトプット恐怖症があるというコラムを前回書きました。そんな恐怖症を抱えてるのに、なぜアウトプットするのか?と …
【コラム】アウトプットを続けるデメリットと克服の考え方について
アナリティクスアソシエーション 大内 範行今日は「学びのアウトプット」について、メリットではなくデメリットについて書いてみたいと思います。 本を読む、動画を見るなどのインプットだけで …