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先日、ソーシャルメディア上で見かけたある写真に、少し違和感を覚えました。あるWebメディアの利用状況を表すプレゼンスライドを撮った写真で、スライドには「MAU ○○」と大きく書かれていました。一般的に「MAU」は「月あたりのアクティブユーザー数」を表しますが、主にアプリなどで利用者数の状況を示す目的で使用されます。通常のWebメディアで「MAU」という指標を用いる際は、アクセス解析ツールの「ユニークユーザー数」の指標を単純に用いるのではなく、少なくともログインを基軸として何らかの定義付けをして算出しなければ、実態よりも大きな数字になりがちです。冒頭のWebメディアも、適切に算出したものであってほしいのですが。

Cookieをベースに「ユニークユーザー」を判別しているアクセス解析ツールは、複数の端末やブラウザーを利用するユーザーを「一人」として集約することが容易ではありません。「自宅PCと会社PCでの閲覧は、アクセス解析ツール上では別ユーザーですよ」という課題は昔からありましたが、いまはスマートフォンが状況をさらに複雑にしています。

単純に「端末が増えた」だけではなく、「スマートフォンのアプリ内ブラウザーでの利用が増え、Cookieが増えた」という状況です。アプリ内のWebビューはスマホのブラウザーとは異なるユーザーとして認識され、またWebビューを持つアプリごとに異なる、という感じです。

私の利用例で考えてみます。

・Firefox(自宅PC)
・Firefox(会社PC)
・Chrome(会社PC)
・Safari(iPhone)
・TwitterアプリのWebビュー(iPhone)
・FacebookアプリのWebビュー(iPhone)
・GmailアプリのWebビュー(iPhone)
・LINEアプリのWebビュー(iPhone)
・ニュースアプリのWebビュー(iPhone)

これらの利用はすべてCookieが異なるために、アクセス解析ツール上ではすべて異なるユーザーとして認識されます。同一サイトを閲覧すれば、上の例だとユニークユーザー数は「9」とカウントされます。

実際にはさらに別のアプリも利用し、iPadも利用しているので、私が持つCookieはもっと多くなります。

上記のような状況は、OSによっても個人の設定によっても異なりますので、利用者によって状況はまちまちでしょう。ただ言えるのは、特にモバイル端末のトラフィックが無視できないWebサイトでは、「アクセス解析ツールが示すユニークユーザー数は実態よりも大きく上振れしている」と認識した方が良いだろう、ということです。

この状況は、単にユーザー数だけの問題ではありません。通常のブラウザーとアプリ内ブラウザーでのサイト内行動がユーザー軸で紐付いていないため、理解していなければ、効果測定やユーザー行動の把握の際に判断を誤ってしまいます。

例えば、Webサイトで重要なアクションをするユーザーとソーシャルメディア経由のユーザーの行動が大きく異なるのは、「ユーザーの属性や嗜好性が異なる/違うユーザーである」のではなく、「同一人物による利用シチュエーションが違うだけ/単に行動が分断されただけ」の可能性が考えられる、ということです。

最近ある人と話していておもしろく感じた言葉が、「ページビュー数は嘘つかない」というものです。1~2周回った上での言葉だと思います。

昔は、仕様上の違いによってアクセス解析ツールごとに数値が大きく異なり、「ページビュー水増し問題」と揶揄されるような事象がありました。最近では技術の進歩やビジネス利用のツールが共通化したりなどで、そこまで言われることは減りましたが、一方で、ツールが示す「ユーザー数」に懐疑の目を向けているということです。「KPIとしてユーザー数は信頼できない指標なのではないか、いっそページビュー数の方が妥当なのではないか」、いわば「ユニークユーザー数水増し問題」。

冒頭の話に戻れば、一般のWebサイトで「MAU」という指標を用いる際は、ログインを基軸として何らかの定義付けをして算出すべきでしょうし、アクセス解析ツールが示す「ユニークユーザー」は実態よりも大きく乖離しているという認識で、事象を見ていかなければいけないでしょう。

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