コラムバックナンバー
メールマガジン2015年5月20日号より 真摯 いちしま泰樹
企業はいま、ウェブにおける「エンゲージメント」をどうとらえ、どう評価しているのでしょうか。
この数年の間、「エンゲージメント」の評価はソーシャルメディアの世界とWebサイトという限定的な側面の評価にとどまっていて、「顧客との関係性」に踏み込んだ形での評価に至っていないと感じます。妥当な予算やリソース、定常的な運用を前提に考えれば、私自身も良い答えを持ち合わせていません。一般的に、ウェブでの取り組みでの「エンゲージメント」という言葉は、顧客層との関係性において用いられています。意味合いとしては、顧客との関係性の深さ、愛着、共感、絆といったものがおそらく挙がります。
このエンゲージメントという言葉は、企業ごとに定義やニュアンスが異なるはずです。「関係性の深さ、良好さ」として用いられることが多いように感じます。風呂敷を大きめに広げたような、ざっくりとした定義のところもあると思います。
一方、ソーシャルメディアの領域でも、公式あるいはベンダーが提供する分析機能やツールにおいて「エンゲージメント」は登場します。いいね!数やシェア数、返信数やリツイート数といった反応数の合計、あるいはその合計をリーチ数やインプレッション数、フォロワー数などで割ったものを指していることがほとんどです。
ただ、ソーシャルメディアで用いられる「エンゲージメント」は、あくまで「反応数、反応率」にすぎません。Twitterのアナリティクスでも「ユーザーがツイートに反応した合計回数」と定義していますし、Facebookインサイトでも「交流度」は単なる反応数の合計です。ソーシャルメディアを集客チャネルの一つとして割り切れば、コンバージョン獲得の効果測定などで評価もできますが、ソーシャルメディアには「メディア」としての役割があるはずで、その評価はどこかで必要になります。
Webサイトにおける「エンゲージメント」もどういった指標で見ることになるでしょうか? リピート数でしょうか、通算訪問回数や訪問頻度、定着率でしょうか。
企業が本来掲げる「エンゲージメント」と、ツールで容易に扱える「エンゲージメント」には乖離があるにもかかわらず、日々の運用ではツールで得られるエンゲージメントの数値を元に評価している状態で、健全とは言えません。気をつけなければ、振り回されて、「いいね!数やリツイート数が多いことがいい状態」という短絡的な判断に陥ってしまいます。
つまり、ソーシャルメディアやWebサイトでのエンゲージメントを表す指標が、実際のビジネスの指標、またお互いそれぞれの領域の各指標間で、リンクしていないという課題があるということです。
また、例えば「フォローしてタイムラインやフィードに流れてくるけれど、見ただけ」といったカジュアルな接触であっても、関係性の構築に寄与するという意味で「エンゲージメント」の一種になり得るとも、私は思っています。広告でのビュースルーコンバージョンと似たとらえ方です。昨年12月に、a2iのメールマガジンコラムで「ウェブサイトが『母艦』でなくなりつつある時代に」というコラムを書きましたが、これは「エンゲージメント」という言葉を意図して用いずに、顧客との関係性について書いたものです。「ロゴを見かけただけ」でも、関係性の維持に貢献することが大いにあると思っています。
海外では、このような文脈で用いられる「エンゲージメント」は、顧客との関係性の深さではなく、「ユーザーからの何らかのアクションが伴ったリーチ」という意味合いで使用されているという指摘もあります。割り切って「少し熱を帯びたリーチ規模」として評価しているとも言えます。
定期的にユーザーアンケート調査を行って、ブランド評価を把握するというのが方法の一つになると思いますが、実際のビジネスやWebサイト、ソーシャルメディアの各指標とリンクさせるのは相当困難なはずです。相関までは出せたとしても、因果関係までには至らないと思うのです。
Webサイトは当然ですが、予算や工数を使ってソーシャルメディアの運用をしている企業は多く、無視できない取り組みになっています。その運用を適切に支えるための妥当な評価が、いいかげんに必要です。正解はないと思いますが、軌道に乗せている企業があれば、ぜひご指南いただければと思います。
【参照記事】
「効果」を測定する、”エンゲージメント”の真の意味を理解していますか
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