コラムバックナンバー

2013年に、私はこのメールマガジンで「経験と勘の棚卸し」という題のコラムを書きました。「経験と勘を、常に疑って仮説とするぐらいの意識が必要」という内容でした。

いまはどうかと言うと、もう少し厳しく捉えていて、積極的に自分の経験と勘を否定するようになっています。以前なら信じて疑わなかった内容やベストプラクティスも、「はたして本当にそうなのか」「それがベストなのか」「それはいまも有効なのか」と問うています。その先にあるのは、「検証」です。テストであり、トライです。Webサイトやその周辺のビジネスの改善に取り組む際、かつては、主要なターゲットユーザー像の一人として私自身を捉えたり、なりきることができました。周囲の多くの人がPCだけを利用し、利用環境やシチュエーションが皆似ていた時代です。Webサイトのカテゴリーもいまほど多様ではなく、自身を一般的なユーザー像に置き換えやすかったのでしょう。むしろ「私がネットユーザーの先輩格」という勘違いすら少し持っていました。

いまや、私とは異なるネットユーザーが周囲に多くいます。環境は大きく変わり、ユーザーは多様化しました。すでに私自身は、BtoBのカテゴリーならまだしも、多くのサイトのターゲットユーザー像としては明らかにマイノリティです。何種類もの端末を利用するようになったとはいえ、古くからPCを中心に利用する40過ぎの中年男性です。世の中にパラダイムシフトが起きているのは理解していても、思考や発想は完全にパラダイムシフトしていません。

スマートフォン端末しか持っていない学生や、最初の端末がタブレット端末の子供たちにとっては、「古い人たち」にしか見えないでしょう。

冷静にこの業界の経験年数で判断すると、おそらく私は「ベテラン」の領域に入ります。ドッグイヤーの世界ではもはや老犬で、アドバイスは独り言や遠吠えかもしれません。ベストプラクティスは昔自慢かもしれません。5年後10年後のインターネットは、いまの私の思考の文脈上にはきっとありません。

マイノリティがのたまう「こうだと思いますよ」という言葉なんて、怪しいものです。その考えは検証する必要がありますし、むしろ否定から始めるべきです。

そういった自覚を自分で持っていたいのです。ベテランの領域の人は、そこからスタートするべきだと思うのです。

ベテランの経験と勘は、かつて「知見」でした。いまや多様な「仮説」の一つに過ぎず、検証するに値するものです。仮説は、検証を、A/Bテストを、トライ&エラーを、すべきです。

自分の経験と勘の賞味期限は切れていないかどうか、なかなか自分にはわかりません。周囲に指摘する人が見当たらなければ、自身が疑ってかからないと、5年後10年後の役割や仕事はありません。

FacebookがWebビジネスに大きな影響力を持ち始めたのは2011年以降で、LINEがリリースされたのも、アドテクノロジー界隈がにぎやかになってきたのも同じ頃です。5年前の経験は、もはや使うに堪えないものがあるはずです。

ベテランの経験が生きるとすれば、チャレンジすることを厭わないことと、仮説や視点の多様さでしょう。分析手法も多様かつ高度になり、手軽に扱えるデータ量は爆発的に増えましたが、それらを実践で扱い続けていたのであれば、この先の変化に臆することはないはずです。

そういう意味でも、ベテランの頭に蓄積されていた知見や経験は、すべて「仮説の種」「仮説の持ち駒」として決して捨ててはいけません。いつでも引き出しから出せるようにして、それらを仮説として、使えばよいのです。

ベテランは自分の経験と勘を信じるな。常に検証を。

経験と勘の棚卸し

★メールマガジンのバックナンバーはこちら

一つ前のページに戻る

a2i セミナー風景イメージ

あなたも参加しませんか?

「アナリティクス アソシエーション」は、アナリティクスに取り組む皆さまの活躍をサポートします。会員登録いただいた方には、セミナー・イベント情報や業界の関連ニュースをいち早くお届けしています。

セミナー・イベント予定

予定一覧へ

コラムバックナンバー

  • 【コラム】注目される統計的因果推論

    株式会社Rejoui 菅 由紀子
    発信元:メールマガジン2021年10月20日号より

    先日発表されたノーベル経済学賞の受賞者、デービッド・カード、ヨシュア・アングリスト、グイド・インベンスの3氏は「自然実験が知識の源泉となるこ …

  • 【コラム】計測できるものだけで都合良く評価していないか?

    株式会社真摯 いちしま 泰樹
    発信元:メールマガジン2021年10月13日号より

    ■「測定できなければ管理できないというのは間違いで、代償の大きい誤解だ」 誤って引用されるフレーズに「測定できなければ管理できない」というも …

  • 【コラム】ABテストの科学

    Option合同会社 柳井 隆道
    発信元:メールマガジン2021年10月6日号より

    ABテストをするとき 「施策AとBを比較した結果、施策AのほうがCVR(目的の指標)が高いので優れていると判断した」 そこで思考が終わってい …

バックナンバー一覧へ