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「リーンアナリティクス」という書籍が日本語に翻訳されて、アマゾンでも発売されました。今日現在、まだレビューはついていませんので、発売されたほかほかという状況のようです。
僕自身は、2013年に英語版を辞書を引きながら読みました。すでに忘れていた部分も多かったのですが、今回読みなおしてみて、アナリティクスに携わる方に必読書としてお勧めしたいと改めて思いました。「LEAN」という単語ですが、ぜい肉の取れた、体が締まったという意味を持ちます。この言葉が使われた背景には、トヨタ自動車の生産方式があります。いわゆるかんばん方式と言われた手法で、徹底的にムダを排除した生産方式として、米国でもセンセーションを巻き起こし、GE(ゼネラル・エレクトリック)も積極的に導入しました。これが一般化した時「リーン生産方式(Lean Manufacturing)」と呼ばれるようになったわけです。「リーン」をつけると、無駄を排除した画期的な手法という雰囲気が出るわけです。

そもそも「リーンスタートアップ」という起業家のための指南書で提唱している “構築(Build)- 測定(Measure)- 学習(Learn)” のサイクルのうち “Measure” の部分について解説した本でもあります。でも、スタートアップだけのものではなく、多くのビジネスに通じるものです。

「リーンアナリティクス」つまり徹底的に無駄を排除したアナリティクスの場合、1つのアクショナブルな指標だけを見て、どんどん改善していこう!となります。この場合のぜい肉は「たくさんの情報とデータ、そしてそれらの分析と検討の無駄な時間」ということでしょう。
書籍の中では6つの異なるビジネスモデルについて、それぞれの指標の例や考え方を提示しています。また、実際に有用なアクショナブルな先行指標(KPI)と、そうでない指標についても、具体的な例を挙げて説明しています。
ちなみに僕も自転車にはまって、すっかりLEANな感じですが、同じようにアナリティクスからアクションにつなげる方法を日々模索しています。リーンアナリティクスは、そこに重要なヒントを与えてくれます。

一回目に読んだ際には、この本を「アナリティクス」の書籍として読みました。主に指標やその手法の部分に注目して読んでいたように思います。しかし、今回二回目を読了してみて、これはリーダーシップについての本なのだ、ということに今さらながらに気が付きました。
リーダーシップについては、このリーンアナリティクスの最後にこんな記述がありました。僕の超訳ですが「科学は純粋に実証的なもので感情とは別のところにあるが、科学者はそうではない。直感と情熱が必要なんだ」と。

データドリブンを推進するアナリストは、情熱と勇気を持って、組織の中でリーダーシップを発揮しなければならない。データで組織を動かすのは、一日ではできることではない。小さくはじめて、実績を出して、そこから突破口を開いて行こう、と呼びかけています。
そして、これからのリーダーは、伝統的なリーダーとは異なり、大量に存在する情報とデータの中から、皆が同意できて、決断できて、一つの方向に向けて進むことができるシンプルなメトリックスを提示して、チームをひっぱっていくことができる人なのだと。
「シンプル」な分析と改善の取り組みこそ、その突破口を開く鍵なのだと、まさに著者が情熱を持って話しかけてくれている、そんな書籍だと思いました。

今このコラムを読んでいるあなたは、企業の中でデータ分析に取り組む人だと思います。その地位にかかわらず、あなたは、あなたの企業のビジネスリーダーになるポテンシャルを持っているのです。だから自分を信じて、データ分析がビジネスに貢献できるように、情熱を持って進んでいきましょう。
この書籍を読みながら、自分自身への呼びかけも含めて、そんな思いを強くしました。

「Lean Analytics ―スタートアップのためのデータ解析と活用法」

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