コラムバックナンバー
メールマガジン2014年12月3日号より 真摯 いちしま泰樹
ウェブサイトはチャネルの一つに過ぎなくなり、カジュアルな情報接触が増えたいま、そのカジュアルな接触が積み重ねる「関係性の構築」の包括的な把握にもっと意識を向けよう、というお話です。
ウェブサイトが「母艦」でなくなりつつある時代だと思います。複数チャネルを使ってウェブサイトに集客するのではなく、複数のチャネルで常にユーザーと接点を持ち続け、コンバージョンに向けた関係性を醸成する取り組みにシフトしているところもあるでしょう。情報の接点の中心がモバイル端末に移り、ニュースアプリの利用も増え、私たちはキャッチーな写真と見出し、そして数行の文章で、短時間で情報を処理するようになりました。さらに「何が何でもウェブサイトに集客」というのでなければ、それぞれの接触チャネルで完結したコンテンツ提供も必要です。
細切れの可処分時間では、ニュースアプリ、ソーシャルメディア、メールマガジン、紙媒体やマスメディア媒体、それぞれのチャネルで触れる以上の「詳細の内容」に接しようという動機は小さくなってきました。いわば「受信」のようなカジュアルな理解でも満足している、と言えるでしょうか。
その「受信」が積み重ねる「関係性の構築」の状況把握に、もっと向き合わなければいけないと思います。単一チャネルのみの把握と改善では、特にBtoCや実店舗に誘導するビジネスでは、近視眼的な取り組みに終わってしまいます。
その企業やブランドとの総接触時間、接触頻度、クリックや読了といった動機の熱量を推し量るアクション、それらを「ウェブサイト」「アプリ」「ソーシャルメディアアカウント」など各チャネル単位で捉えるのではなく、「うねり」のようなものとして感じ取れるようにならなければいけないのでしょう。実際に取り組むとなると困難であるのは承知の上で、これを書いておりますけれども。
「詳しくはウェブで」で訪問してくるのは、ファンや常連層ではなく新規の訪問者だけかもしれません。あるいは、各チャネルで触れるコンテンツがすべてで、ウェブサイトに行かずとも情報収集としては満足してしまっている人が大多数かもしれません。そうなると、状況把握はすべてのチャネルを包括して行わなければいけないと思うのです。
僕は動物園に行くのが好きなのですが、ソーシャルメディアアカウントのフォローやメールマガジンの購読をしていると、各動物園のウェブサイトに訪問することはかなり減りました。各チャネルで「詳しくはこちら」の誘導はあるものの、すてきな写真と数行の文章だけでも、情報の「受信」は十分だからです。ウェブサイトに訪問するのは調べ物のときぐらいでしょうか。そんなウェブサイトに訪問しなくなったユーザーでも、各チャネルの情報をきっかけに、動物園に足を運ぶのです。
ECのようにコンバージョンポイントがウェブサイト側にあると捉えられているプラットフォームでも、TwitterタイムラインやFacebookニュースフィードから商品を直接購入できる仕組みが発表されるなど、ウェブサイトを介さずにEコマースが成立する状況が整いつつあります。
社内一部門の運用によるウェブサイト中心の牧歌的なマーケティングは終わり、ウェブサイトは母艦ではなくチャネルの一つに過ぎない。そうなった場合、各チャネルを運用する視点も改善する視点も、大きく変えなければいけません。パラダイムシフトは起こりつつあります。
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