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フォワード型分析者は、もっとビジネスの現場に出て、関わっている人たちの話を聞き、商品やサービスを使ってみよう、というお話です。

「フォワード型分析者」とは何でしょうか?
大阪ガスの河本薫氏の書籍『会社を変える分析の力』で登場する分析者の分類です。データ分析でビジネスを変革するプロセスには、「見つけるステップ」「解くステップ」「使わせるステップ」の3つがあり、その3つのすべてに関わる分析者が「フォワード型分析者」であるとその本では紹介しています。ちなみに、「解くステップ」のみを担当する分析者を「バックオフィス型分析者」と分類しています。

今年の「アナリティクスサミット2014」の基調講演でも河本氏にお話いただいたので、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。よりコンサルタントに近い、あるいはその役割も強く担う分析者が「フォワード型分析者」なのだと、私は捉えています。

「見つけるステップ」では、ビジネス現場へのヒアリングの力や解決の糸口の発見力、改善がもたらすビジネスインパクトの見積もりなど、より幅広い能力が問われます。「使わせるステップ」でも、伝える力をはじめ、分析とは少し離れた能力を必要とします。

そのフォワード型分析者であるには、もっとビジネスの現場に出て担当者とコミュニケーションせよと、本書の中で繰り返し述べています。

私も、改めてこの「現場に触れる」ことの重要さを最近特に感じます。これまでもできるだけ関係者のお話を直接お伺いしたり、実際の商品やサービスを利用するように努めていますが、過去のうまく進められた取り組みでは、この事前の情報収集から実際に運用に至るところまで、現場を含めたコミュニケーションががっちりかみ合っていました。一方で、うまく進められなかった取り組みでは、コミュニケーション不足や手元の情報を頼りにしてしまったという反省点をやはり感じます。

いつものミーティングで顔を合わす人以外の関係者様が同席された際は、一見本題から少し外れた質問をすることがあります。普段やっていること、困っていること、助かっていること、やりたいけれどできていないこと、こういうことができたらなと思っていること、そこに課題の糸口があります。例えば、「定期的にこのツールのこの数値を見て判断の参考にしているけれども、別のこういうときはどうしたらいいのか?」という回答は大きな糸口です。データを計測していなければ、その改善後の影響度を判断して取得し、その後にダッシュボードへの組み込みや定期的なレポート配信の検討につなげられます。他に適切なデータや方法があれば、ご案内もできます。中の人でしかわからない事情や悩みは、積極的に聞きに行かなければ表に出てきません。

商品やサービスを実際に使ってみるのも同様です。BtoB向けの商材や、人生で数回しか利用しない商材はむずかしいかもしれませんが、できるだけその商品を手に取ったり、店舗に足を運んだり、資料請求のフローをたどったりするようにしています。利用者として感じることは、その企業のビジネス課題が生まれる現場そのものであり、課題解決の糸口が多く転がっています。例えば、「商品のこの使い方は気がつきにくいだろうな、難しいだろうな」と感じれば、店頭POPやサイトやアプリでの情報を追加したり営業担当者の説明を加えたりなど、その情報への接触を促すことで、少しは解決の方向に向かわせられるかもしれません。

「分析」というと、内にこもってデータや素材を元に深く掘り下げるというイメージがあるかもしれません。もちろんその側面は必要なのですが、データにない部分にもヒントが多くあります。むしろ、データは素材の一部です。分析者がビジネスにより貢献するには、もっとビジネスの現場に触れ、生きた声を拾うことで、分析者の過去の経験も生きてくると感じます。

本棚を整理していたら河本薫氏の『会社を変える分析の力』が出てきて、この1週間ほど改めて読み返していました。昨年にこの本を読み、今年の5月に「アナリティクスサミット2014」の基調講演でお話を聞いたので、この内容に触れるのは3度目です。触れるたびに、分析に携わる姿勢について多くの示唆を与えてくれます。他の方も何度かこのa2iのメールマガジンコラムで取り上げている本ですが、折に触れて読み返したい本です。

河本薫 著『会社を変える分析の力』

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